「ポストシーズンの悪夢」を振り払った楽天3人の野球人生 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 2013年の日本シリーズ。楽天の3勝2敗で迎えた第6戦。試合が行なわれるのは楽天の本拠地であるKスタ宮城。そして先発はシーズン無敗のエース・田中将大。日本一へ、舞台は出来過ぎなほど整っていた。試合も序盤に楽天が2点のリードを奪うなど、誰もが日本一を信じて疑わなかった。しかし、田中は今季最多となる4失点で、440日ぶりの黒星を喫し、シリーズは第7戦までもつれ込んだ。

「田中だって神様とか言われているけど人間なんでね。今日、テレビを見ているみなさん、球場へ来たお客さんは、田中の負けを見たんだから、これはもう本当に幸せだなと。今年はこういうこと(負け)がなかったんだから」

 星野監督はそうコメントを残し、会見場から足早に去っていった。

 迎えた第7戦。球場に姿を見せた星野監督にピリピリした雰囲気はない。打撃練習を終えた藤田一也が「絶好調です」と言うと、星野監督は「絶好調だって(笑)。ホンマか!」という和やかなやりとりが行なわれるなど、気負いは感じられなかった。

 チームのキャプテンである松井稼頭央はシリーズ中、「今の心境は?」という報道陣からの質問に、「見ての通り、いつもと変わりません」と同じ答えを繰り返し、第7戦当日も「いつも通りです」と笑った。

 松井は西武時代の1997年に日本シリーズ初出場を果たすも、ヤクルトの前に1勝4敗。連続出場を果たした98年も横浜(現横浜DeNA)に2勝4敗。3度目の出場となった2002年は巨人の前に屈辱の4連敗。日本一を果たせぬまま、2004年に海を渡った。

 メジャーではロッキーズ時代の2007年にワールドシリーズに出場した。しかし、レッドソックスの前に0勝4敗と完敗。ちなみに、この時のレッドソックスには松坂大輔、岡島秀樹が在籍しており、シャンパンファイトで無邪気に喜びを爆発させていた彼らとは対照的に、淡々とロッカーの整理をしていた松井の姿が、今も印象に残っている。

 シリーズ第7戦の1回表、松井は何でもないショートゴロをエラーし、ピンチを招いてしまう。結局、二死満塁から坂本勇人がセンターフライに倒れて事なきを得たが、試合後に松井は「オレ、結構緊張してるやんって思いました」とその時の心情を吐露した。

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