09年のダルビッシュ有を彷彿させた美馬学のカーブ攻め (2ページ目)

  • 中島大輔●構成 text by Nakajima Daisuke
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 僕が日本ハムの投手コーチをしていた2009年の日本シリーズで、ダルビッシュ有が巨人打線に緩いカーブを多投して勝利したことがありました。試合前、「やたら緩いカーブを練習しているな」と思っていたんですが、巨人が緩いカーブに弱いことを本人はわかっていたんですね。さすがだと思いました。それで昨日の試合ですが、おそらく楽天のスコアラーがしっかり調べて、キャッチャーの嶋基宣と美馬が用意した配球だと思います。

 試合後のインタビューで星野仙一監督が「嶋のリードが珍しく冴えていた」と言っていましたが、昨日はキャッチャーの配球がよかったという試合でした。巨人打線の状態が悪いということではありません。高橋由伸、亀井善行は内角のスライダー、外角のシュートを引っ張りにかかっていたけど、村田修一と阿部慎之助はしっかりポイントで捉えていました。長野久義はもっと内角を攻められると思っていましたが、外のボールをいい当たりにしていましたね。坂本勇人もいいときのスイングに近かった。状態の悪いときは外のボールを追いかけていたけど、体を残して振れていましたから。昨日は楽天のバッテリーがしっかり攻めたという試合で、巨人打線の状態を心配する必要はないと思います。

 美馬は6回途中、右足に打球を受けるアクシデントで降板しましたが、2番手にレイが登板した時は、「3イニングくらい行くんだろうな」と思いました。今季の戦いぶりを見ていると、ラズナーが故障で抜けた後は、中継ぎに長いイニングを投げさせることが多かったですから。結果、レイは2回と3分の1を投げました。

 星野監督としては、ああいう継投しかないと思いますよ。斎藤隆には最後の1イニングを任せることができるけど、それまでを先発と、調子のいい中継ぎになるべく長く投げてもらうしかないでしょうね。

 楽天にとって、田中将大と則本昴大以外の先発で勝ったのは大きいです。2勝1敗としたことで、田中の登板間隔を縮めたり、則本をリリーフに回したり、そういった無理をする必要がなくなりました。たとえ4、5戦目を落としたとしても、6戦目は中6日で則本、もしくは田中で勝負できます。昨日勝利したことで、余裕を持って投手を使うことができるようになった。そういう意味で、本当に大きな1勝だったと思います。

 4戦目の先発は、巨人がホールトン、楽天がハウザー。楽天が勝つには、ホールトンを早めに攻略することがポイントです。逆に巨人は、1点でも多く勝ち越し、リリーフ勝負の展開に持ち込みたい。楽天はリリーフ陣のことを考えると、2、3点のリードでは厳しい。昨日のように、序盤でビッグイニングを作れるかどうかですね。1、2、3回の攻防が、試合の勝敗を分けると思います。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る