楽天ファン待望の一日「初めて日本シリーズがやって来た!」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして、東北と楽天に日本シリーズ初勝利をもたらした第2戦。田中将大がいつものように相手打線を封じ、二塁手の藤田一也も普段通り難しい打球を難なくさばきアウトにする。4番のA・ジョーンズは強引に長打を狙うことなく、いつものようにボール球を見逃して3つの四球を選んだ。

 楽天は6回裏に日本シリーズ15イニング目にして初得点を刻み、次の回にも1点を追加。8回表に巨人・寺内崇幸のホームランで1点差とされ、9回表の最後の守備についた。先発の田中将大は三塁のファールラインを超える手前で立ち止まると、被っていた帽子を胸に当て、小さくお辞儀をしてマウンドへと向かった。

 スタンドからの「タナカ」コールが鳴り止まない中、先頭の高橋由伸、次打者のロペスを内野ゴロに打ち取り2アウト。そしてこの時、信じられない光景を目にするのだった。ファンの誰もが勝利を確信して、チームの勝利の瞬間に打ち上げる白いジェット風船を膨らませているのだ。それは確かに、近年では「よく見る光景」かもしれない。しかしこの時は日本シリーズという何が起こるかわからない大舞台で、しかもリードはわずかに1点。目をつぶって祈るような緊迫の瞬間なのだ! 楽天ファンのメンタルの強さに脱帽するしかないのだった。前出の佐々木氏は言う。

「楽天のファンは、純粋にチームを応援しているだけなんです。相手の選手にプレッシャーを与えることはしないし、チームが負けたからといってモノを投げ込んだりしない。日本シリーズだからといって、特別に意識するわけでもなく、普段通りに応援しているだけなんだよね。日本シリーズを見られてよかった。勝っても負けてもありがとう。そんな気持ちじゃないかな」

 そして試合は、田中が最後の打者・坂本勇人を空振り三振に仕留めると、真っ白なジェット風船がいっせいに舞い上がり夜空を覆いつくした。

 2試合を通じて見えたもの。それは、初めての日本シリーズを前にしても「普段通り」のプレイを見せる選手と、「普段通り」の応援をするファンの姿だった。

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