日本シリーズならではの投手起用法とは? (2ページ目)

 そういう意味で、巨人は今、澤村拓一をそのポジションに置いています。広島とのCSファイナルステージ初戦では、4回の攻撃で先発の内海哲也に代打を出し、早々と交代させました。そのあと、マウンドに上がった澤村が好投し、逆転勝利を演出しましたが、それが今の巨人の強みだと思います。澤村がひとりいることで、リリーフの山口鉄也、マシソン、西村健太朗を前倒しで使わなくてもいい。これは大きなアドバンテージだといえます。

 一方の楽天は、そういった専門家がいないだけでなく、リリーフに不安を抱えています。先発に頑張ってもらうしかありません。ただ、宮川将や福山博之あたりは、テンポがいいですし、コントロールも悪くない。こういうタイプの投手は、ロングリリーフに向いていると思います。彼らがうまくはまってくれれば、楽天のリリーフ陣は劇的に変わるでしょう。このポジションを星野監督は誰に託すのか、興味深いですね。

 また、日本シリーズのような短期決戦において、もうひとつ重要なのが先発のローテーションをどうするかです。実は、昨年の日本シリーズでも第1戦の先発を吉川光夫にするか、武田勝にするかで悩みました。普通に考えれば、シーズン14勝を挙げた吉川で決まりなのですが、シーズン終盤あたりからやや疲れが見えはじめ、絶好調の時に比べるとスピードもキレも落ちていました。その吉川と対照的に調子が良かったのが武田勝です。最終的に監督が、「1年間頑張ったから」と吉川に決めたのですが、難しい選択でした。

 1戦目の先発というのは、チームを背負うことを意味しています。その投手が勝てば日本一の可能性が高くなるし、負ければ当然、厳しくなる。実際、昨年の日本シリーズは吉川が打たれ、日本ハムは日本一を逃しました。ただ、吉川はストレートのスピード、キレともに抜群で、いい時の状態に戻っていました。打たれた原因は、クセを見抜かれていたか、配球を読まれていたかのどちらかだと思いますが、やはりこの短期間で修正するのは難しい。それに私自身、クセや配球が読まれていても、吉川なら勝てるんじゃないかと思っていました。さすがに甘かったですね(笑)。いずれにしても、エースで勝てないと日本シリーズを制することはできません。

 今回、楽天は第1戦に開幕から無傷の24連勝を記録したエースの田中将大ではなく、則本昂大を持ってきました。おそらく、田中で負けることはできないので、十分に休養を取って万全の状態でマウンドに上げたいという思いがあったのでしょう。ただ大事なことは、この決断を選手たちがどう受け取ったかだと思います。チーム全員が納得してのことだったら何の問題もありませんが、ひとりでも「あれっ?」という選手がいれば、厳しいかもしれません。選手、スタッフを含め、全員が同じ方向を向いていないと、チームに勢いは出ません。

 いずれにしても、則本、田中のふたりで4試合先発することは間違いないでしょう。万全の状態で田中を第2戦に持ってきたことが功を奏するのか。第1戦の戦いが非常に重要になってくるような気がします。

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