CS初進出の広島に「ジャイアンツ・キリング」の予感!

  • 大久保泰伸●文 text by Ohkubo Yasunobu
  • photo by Nikkan sports

 さらにCS争いも佳境に入った8月20日、開幕からサードのポジションを守り続けていた堂林翔太が左手に死球を受けて骨折し、戦列を離れた。レギュラーに定着して2年目の堂林は離脱するまで、打率2割1分7厘、失策19個(リーグワースト)とマイナス面も多かったが、チーム2位の41打点をマークするなど、着実に成長を遂げていた。その堂林に代わりサードに入った木村省吾と小窪哲也が、見事にその穴を埋めた。特に木村は打率3割を超える打撃で、「下位からでもチャンスを作れたのは大きかった」と新井コーチの評価も高い。何より、安定した守備力は、投手陣に安心感をもたらした。2010年は東出、2011年は梵英心(そよぎ・えいしん)と、いずれも故障離脱した内野の穴を埋めたスーパーサブの真骨頂だった。

 一方、投手陣はエースの前田健太を筆頭に、バリントン、大竹寛、野村祐輔の4本柱が2ケタ勝利を挙げた。広島で4投手による2ケタ勝利達成は、北別府学や大野豊などを擁し、「投手王国」と言われた1987年以来、26年ぶり。実は、この先発陣の活躍の背景には「昨年の教訓」があった。

 9月の急激な失速でCS進出を逃した昨年は、開幕から主に中5日のローテーションを組んでいた。シーズンを通してフル回転状態が続いた結果、勝負どころの9月に前田が5試合に先発して1勝しかできなかったのをはじめ、4本柱が挙げた勝ち星はわずか4勝。スタミナ切れは明らかだった。

 そうした反省を生かし、今季は開幕から先発に無理をさせない起用を続けた。連戦が続いた7、8月も、なかなか結果を残せない中村恭平や中崎翔太を使い続け、中6日のローテーションを守り抜いた。

 その結果、エースの前田は7月14日から9月21日まで負けなしの9連勝。前半戦はなかなか勝てなかったバリントンも8月4日から9月25日まで7連勝。大竹、野村も順調に白星を重ね、3位争いのライバルチームを大きく引き離した。

 そして「指揮官の覚醒」だ。開幕当初から「日替わり打線」と揶揄され、144試合で109通りにも及んだ打順も、シーズン終盤にはある程度の形が完成し、機能した。休養を与えながら慎重に起用してきた故障持ちの梵や石原慶幸も勝負どころで結果を出し、昨年6勝17敗1分だった9月を今季は14勝7敗で乗り切った。

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