シーズン200安打ならずも、内川聖一が一目置く「長谷川勇也の正体」 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 しっかりとしたルーティーンを黙々とこなす長谷川。しかし、決して過去を踏襲するだけではない。

 長谷川は今季を迎えるにあたり、大きな変化にチャレンジしていた。そのひとつが調整法だ。ここ数年は、すっかりスロースターターのイメージが定着していた。打率2割台に終わった過去3シーズン。しかし、夏場以降は高打率をマークしていた。要するにエンジンがかかるのが遅すぎたのだ。昨年のオフ、長谷川は自主トレのスケジュールを大幅に見直した。

「例年、1月はランニングやウエイトなど体力づくりがメインで、バッティングを作っていくのは2月のキャンプから。それらのすべてを1カ月早めました。昨年末からしっかりトレーニングをして、1月はとにかくバットを振り込みました。以前はオープン戦で1年間戦うための自分の形を探していましたが、それもキャンプには出来上がるようにしました」

 その結果、開幕から安定した成績を残し、5月19日以降、3割を切ることは一度もない。6月には月間打率4割3分6厘という驚異的な数字を叩き出した。

 この長谷川の今季の大ブレイクを予想していた人物がいる。ソフトバンクの小川一夫二軍監督だ。開幕前、ファームの試合に合流していた長谷川が放った打球の鋭さ、強さにこれまでにない驚きを覚えた。

「以前は興味を示さなかったウエイトトレーニングに取り組んだ成果でしょうね」

 小川監督は満足気に笑う。ソフトバンクはこの3年間、特に若手選手の育成を目的として、全日本ボディビル選手権6連覇を達成し、日本代表経験のある高西文利氏を定期的に招き、体づくりに励んできた。長谷川はもともとウエイトトレーニングに興味を示さなかった。しかし、新しいチャレンジのひとつとして昨秋から高西氏の指導を積極的に受けるようになったのだ。

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