斎藤佑樹、嬉しくなかった登板で得た最大の収穫 (6ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 帰りがけ、斎藤に2枚の写真を見てもらった。

 今年7月、ファームの試合で投げたときのフォームと、この日の試合のフォーム。

 ちょうどテークバックの瞬間をほぼ同じ方向から捉えた写真だったが、7月は力が抜けたいい形を維持していたのに、この日は明らかに力が入り、上体が反っくり返っている。

 斎藤は2枚の写真を見比べ、「ああ、やっぱり力、入っちゃうんですね」と苦笑いを浮かべながら、顔を歪めた。

「ファームで投げるときのように力を抜いて投げられればいいんですけど、それでは力のあるボールが投げられないと思っちゃうんでしょうね。どうしても力が入ってしまう。でも、今日投げて不安になることはひとつもありませんでしたし、恐怖感もまったくない。投げてみて、もう投げたくないと思うような感じもない。肩に関しては復帰できましたけど、勝つことに関しては復帰できていないんで、次はそこを目指します」

 10月、斎藤は宮崎で行なわれる若手中心のフェニックス・リーグでローテーションに入り、3~4試合で先発する予定だ。斎藤は、最後にこう言って笑った。

「宮崎では、“脱力”がテーマですね」

 力を入れずに投げたら、強いボールは投げられない。

 だから、つい力を入れて投げてしまう。

 でも、力が入るとフォームがブレるし、肩に負担もかかる。

 3年目、最初で最後の一軍でのマウンドで投げられたことによって、力を入れずに強いボールを投げるという着地点を、改めて確認することができた。斎藤は今、“脱力の秋”をテーマに、4年目の復活を見据えている。

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