10勝到達。阪神・藤浪晋太郎を支える最大の武器とは何か?

  • photo by Nikkan sports

吉井理人の「投究論」 第5回

 阪神タイガースの藤浪晋太郎が8月31日の広島戦で勝利し、10勝目を挙げました。高卒ルーキーの2ケタ勝利は2007年の田中将大(楽天)以来で、ドラフト制度導入以降7人目の記録だそうです。藤浪の記録がいかにすごいことか、あらためて思い知らされました。ではなぜ、藤浪は1年目から勝つことができたのでしょうか。

高卒ルーキーながら2ケタを挙げた阪神・藤浪晋太郎高卒ルーキーながら2ケタを挙げた阪神・藤浪晋太郎

 最初にキャンプで見た時、普通に勝てる投手だとは思いましたが、正直、1年間ローテーションを守るとは思っていませんでした。体もまだできていなかったですし、何より1年を通して週に一度のペースで投げた経験がないので、どこかでへばるだろうと思っていました。しかし、背中の張りで1回だけ登板を飛ばしましたが、それ以外はきっちりローテーション通り投げています。それに、ただ投げるだけでなくしっかり試合を作っている。彼の底力を見せつけられましたね。

 彼のピッチングの特徴は、何といってもストレート。独特のインステップの投法から、特に右打者に対して食い込んでくるストレートは脅威です。あの球があるから、右打者は簡単に踏み込めないですし、外のスライダーも効いてくる。10勝できた大きな要因に、右バッターをうまく抑えたことが挙げられます。

 逆に、左バッターには甘く入ってしまうことが多く、痛打されるケースを何度も見てきました。でも、オールスター明けぐらいだったと思うのですが、プレートの踏む位置を変えていたんです。以前は、三塁側の端を踏んでいたのですが、真ん中寄りに変えていた。おそらく、左バッターのインコースにきっちり投げ込めるようにそうしたのだと思うのですが、しっかり考えながらやっているなと感心しました。自分の弱点が何なのかを理解して、その対策をしっかり立てている。なかなかルーキーではできないことです。

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