将来の日本球界を背負う器。解説者7人の「西武・浅村栄斗」論

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports

 最後に、ふたりの評論家が投手目線で語る。

◎吉井理人氏(元日本ハム投手コーチ)

「ファーストストライクから思い切り振ってきますが、ピッチャーにとってはこれが一番脅威。ピッチャーとすれば、ファーストストライクを取るのが一番難しいんです。浅村は狙い球が外れても、思い切り振ってきます。今年はいろんな方向に打球が飛んでいますが、配球を考えて、打つ方向を決めているんじゃないかな。去年まではインコースの甘いボールを引っ張って打つ感じがありましたが、今年はケースによってはポイントを後ろにして、ボールの内側をたたく意識が見られます。それでいて、外角のボールをライトに遠くまで飛ばすこともできる。変化球にはスイングのタイミングを遅らせて、レフトに大きなホームランを打つことができます。タイプ的に近いのはジーター(ヤンキース)。中島(裕之)にも似てきましたね。中島と同じで打率も残せるし、チャンスにも強い。ピッチャーはピンチになればなるほど、早くアウトを取りたいと思うからこそ甘い球を投げてしまうわけですが、そこを逃さないのは浅村のような積極的なバッター。それがチャンスでの強さにつながっています」

◎与田剛氏(第2回、3回WBC日本代表投手コーチ)

「浅村の打撃で良いところは、ストライクゾーンのボールをしっかり振れること。ストレートと変化球で揺さぶられると、スイングが鈍くなる選手もいるんです。浅村は自分が待っているボールではなくても、瞬間でタイミングを合わせて強いスイングをすることができます。ピッチャーからすると、ストライクゾーンのボールを思い切り振って空振りやファールになると、次はやられるという恐怖感を植え付けられるんですね。浅村はしっかり振って、相手に恐怖を与えられる選手。『今年は配球を考えるようになった』と話していましたが、ピッチャー心理を読む余裕ができたんでしょうね」

 評論家各氏は皆、ワクワクした口調で浅村の話をしてくれた。それほど彼の能力が、プロの世界でも際立っているということだろう。3割、30本塁打、30盗塁、そして2000本安打へ――。22歳の4番打者は、今後も底知れない才能を披露してくれるはずだ。

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