「9月の悪夢」は繰り返さない。CS初進出へ、広島ナインの思い (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro 大久保泰伸●協力 cooperation by Ohkubo Yasunobu

 ただし、投手陣に不安がないわけではない。4投手を中6日で回すためには、ローテーションの谷間が2回できる。これまでは中崎翔太、中村恭平といった若い投手をマウンドに送ったが、彼らは結果を残すことはできなかった。それでも4本柱がしっかりと結果を残してくれたため、4カード連続して勝ち越すことができたが、問題は4本柱が勝てなくなった時だ。だが、打線を牽引する丸佳浩は力強くこう語る。

「前半戦はピッチャーに助けられっぱなしでしたからね。ピッチャーがしんどくなってくる時は必ず来るので、その時は僕らがカバーしていけたらいいと思います。終盤の大事な時期には、なおさらです。つながりのある打線で、点を取っていきたい」

 さらに、7月に加入してから、36試合で11本塁打、31打点を稼ぐ4番のキラが後押しする。

「今はチーム全体がバットを振れていると思う。自分もそのいい流れに乗れているだけだよ。そもそも野球はひとりでやるものじゃない。チームのひとりひとりが機能してこそ、勝ちにつながっていくものだからね。自分としては、とにかくどんな状況になろうとも、1打席1打席を真剣に取り組むだけだ」

 今年こそ広島が16年ぶりのAクラス入りを果たすためには、9月以降をどう戦い抜くのかにかかっている。シーズンの最終盤で4本柱の登板間隔を短くしてスクランブル体制にしたとしても、打線の援護がなければ勝つことは難しい。昨年のヤクルトは、夏場に宮本慎也や相川亮二など"チームの顔"が相次いで故障離脱し、「宮本さんが戻るまでは」「相川さんのために」という一体感が、終盤戦の快進撃に繋がって逆転で3位となった。果たして今年の広島は、昨年のヤクルトのように勝負どころでチーム一丸となることができるのか――。

「僕自身もそうだけど、去年の悔しさを、これから選手がどれだけ晴らしてくれるか」

 野村謙二郎監督が言葉にする"悔しさ"を忘れずに、ペナントレースの終盤戦を戦い抜いたとき、16年ぶりのAクラス、そして、球団初のクライマックスシリーズ進出を実現することになる。

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