今年の阪神は「死のロード」に耐えられるか? (2ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 こう書くと、「お先真っ暗」のように感じるかもしれないが、明るい材料はある。その筆頭は、福留孝介の一軍復帰だ。5月8日に出場選手登録を抹消され、同28日に左ひざ半月板を手術。地道なリハビリを続けてきたが、8月6日のファームの試合で実戦復帰できる見込みだと言う。最初はDHでの出場になりそうだが、順調にいけば、8月中旬にも一軍に戻ってこられるかもしれない。福留ひとりの力で勝てるわけではないけれど、優勝経験があり、勝負強い福留の戦列復帰は、何よりの『特効薬』になるはず。外野の守備力アップという点でも、その影響は大きい。ブレイク中の今成亮太をベンチに置くのはもったいない気もするが、その場合は代打であの打力を披露してもらえばいい。復帰直後の福留が、「連戦が厳しい」となったときにも、今成がいれば大きな戦力ダウンにはならないだろう。

 復帰ということでいえば、上本博紀も復帰間近だ。開幕前に左足首のじん帯を損傷。6月24日に手術に踏み切った。西岡剛が体調不良や左ひざ痛で試合を欠場したとき、「上本がいれば......」と思ったファンも多いのではないか。今は西岡もファーム調整中で、どちらが先に上がってくるか分からないが、いずれにしても上本のパンチ力ある打撃と、チームで1、2を争う俊足は、必ずや打線を活性化させてくれるに違いない。

 投手陣に目を向ければ、やはり気がかりなのは年齢層の高いリリーフ陣だが、ここへ来て頼もしい若虎が現れた。松田遼馬――。高卒2年目の右腕である。中西清起投手コーチが、「将来のクローザー候補」と位置づける松田は、7月13日のプロ初登板から8試合連続無失点中。最初は点差の開いた場面での登板だったが、徐々に僅差の場面で使われるようになり、今後は「勝ちパターンでの起用も」と中西コーチは示唆している。これまで試合展開を問わず、またロングリリーフもこなしてきた渡辺亮がいないだけに、連投もOKな松田の存在はさらにクローズアップされそうだ。

 また、新守護神としてスタートを切りながら不振でファーム降格となっている久保康友も、そろそろ一軍復帰が見えてきた。何回を任されるかは分からないが、もともと力のある投手。ブルペンの厚みが増すことは間違いない。

 幸い、8月には巨人との直接対決が6試合ある。ここの勝敗いかんでは、まだまだ肉薄する可能性があるのだ。85年のVメンバーでもある吉竹春樹作戦・守備走塁コーチは、「この時期、目標があるのとないのとでは違う。オリンピックでも何でも、目標があると、違う力が出てくる。『気』でヒットが打てたり、『気』でボールを捕れたりということもあるんじゃないか。それは、この時期に目標があればこそだから」と言った。

 目標を見失わないことが、長期ロードを乗り切るために、最も必要なことかもしれない。ここで阪神が失速すれば、セ・リーグの火が消えてしまう――。8月を終えて、あの1ヵ月が「死のロード」だった、とならないためにも、阪神は勝つしかない。

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