ダルビッシュ有も田中将大も転機は「プロ2年目」だった (2ページ目)

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 彼らがそうしたピッチングスタイルを確立したきっかけは、それぞれのプロ2年目にあったと思います。ともに1年目は、高卒ルーキーながら一軍を経験し、ダルビッシュは5勝を挙げ、田中は11勝をマークした。そのピッチングを振り返ると、ストレートで押すというよりは変化球、特に得意球であるスライダーで勝負するスタイルでした。

 1年目というのは、明らかな欠点がない限り、コーチは選手に対してあまり口を出しません。だから彼らも、勝てるにはどうしたらいいかと自分なりに考えて、得意球であるスライダー中心のピッチングをしたんだと思います。

 普通なら、それで結果を出したので、2年目はスライダーにより磨きをかけようと思っても不思議ではありません。でも彼らは2年目になるとストレート主体のピッチングに替えてきた。もちろん「もっとストレートで勝負しろ」という、投手コーチのアドバイスもあったと思いますが、ストレートを磨かない限り、このままでは通用しないと思ったのだと思います。

 僕も日本ハムの二軍投手コーチ時代、口酸っぱく言っていたのは「ストレートをしっかり投げて、自分の必殺パターンを作れ」ということでした。ストレートで空振りやファウルが奪えて、得意な変化球があれば十分、一軍でやっていけます。一発勝負の世界なら、変化球主体のピッチングでも通用すると思いますが、シーズンを通して戦うとなるとそれでは厳しい。変化球を多投するとフォームが崩れる原因にもなりますし、何よりストレートで勝負しないことには、変化球も生きてきません。

 日本ハムに武田勝という投手がいますが、彼はコントロールが良く、球速もさほどないので技巧派のイメージが強いのですが、実はストレートが非常に多いピッチャーなんです。僕の中では完全に本格派ですね。ストレートをしっかり投げ込めるからこそ、スライダーもチェンジアップも効いてくる。ストレートの大事さをわかっているピッチャーのひとりですね。

 ダルビッシュも田中も、2年目にストレートの重要性に気付き、それを磨こうと懸命に取り組んだ。その結果が今の地位を確立したのだと思います。変化球全盛の時代、色々な球種を身に付けたい気持ちもわかりますが、まずはストレート。ダルビッシュも田中も、一流のストレートを手にしてから、いろんな球種に取り組んだ。他の若いピッチャーも、その順序だけは間違ってほしくないですね。

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