バレンティン、ブランコは「55本塁打」を超えられるか? (2ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nikkan sports

 今季のブランコが本塁打を量産している理由に、本拠地がナゴヤドームから横浜スタジアムに変ったことがあげられる。"飛ばない統一級"が導入された2011年、2012年は、全レフト方向への本塁打が7割以上を占めていたが、今シーズンはレフト58.1%(18本)、センター29%(9本)、ライト12.9%(4本)。昨年までの目一杯バットを振り回してホームランを狙っていた姿はない。

 さらに、ラミレスの存在も大きい。日本球界で2000本安打を達成した大先輩から配球を読むことを学んだことで、過去4年間は1度も2割8分を超えることのなかった打率が、今季はリーグ2位の3割3分4厘(7月28日時点)とハイアベレージを残している。たとえホームランが出なくても、コンスタントに安打を積み重ねることで、大きなスランプに陥らない。それが今後、本塁打を量産する上での最大の強みだ。

 2年連続本塁打王のバレンティンは、一昨年は極度の不振でベンチを温めることもあり、昨年は故障や不調で規定打席に達していないながらも、本塁打のタイトルを獲得した。乗っている時のバレンティンは手をつけられない。だが、集中力が途切れたときの脆さもある。小川淳司監督が「彼はいかに集中して打席に立たせるかがカギですね」と語るほどだ。

 そのためのポイントが、前を打つ打者の出塁率になる。走者のいない状況でバレンティンを打席に迎えても、相手投手は一発長打を嫌い、「フォアボールでもよし」として、まともな勝負を避けてくる。バレンティンは7月12日から3試合連続でホームランを放つと、直後の3連戦では12打席6四球と、バットを振らせてもらえなかった。今後、ヤクルトとのクライマックス・シリーズ進出をかけた球団との対戦では、さらにこの傾向が顕著になるだろう。

 ただ、バレンティンにとって追い風なのが、前半戦は機能しなかったヤクルトの1、2番が山田哲人、上田剛史で固定されて出塁率が上がり、3番に座るミレッジの打撃も上向きになっていることだ。走者がいる状況では18本塁打と無類の集中力を発揮するバレンティンにとって心強い援軍である。

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