菊池雄星「ピッチングの『教科書』は捨てました」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

―― それができるようになったのは大きいですね。プロに入ってからの過去3年間は、今どういう形で生きていますか?

菊池 うーん……プロに入って真っすぐ、スライダーしかなかったし、正直、そんなにすぐに勝てるとは思っていなかったんです。周りからは「ドラフト1位だから、最低でも開幕一軍に入らないとダメ」という話をされましたけど、自分では「そんなにすぐには上手くいかないだろう」と感じていて。高校の監督からもずっと「3、4年かけて、一軍に上がれるように頑張れ」と言われていました。焦りがないわけではなかったけど、正直、「こんなものかな」という感じではありましたね。だからこそ、「今年はやらなきゃいけない。4年目が勝負だな」という気持ちがありました。

―― 日本中の注目を浴びながら、プロに入って、プレッシャーはありましたか?

菊池 1年目はありましたね。2年目からは何もないですけど、1年目は「活躍しなきゃいけない」という気持ちが強かったです。

―― それは月日が解決してくれたのか、菊池投手が変わったのか?

菊池 月日が解決してくれたんじゃないですか、たぶん(笑)。1年ごとにドラフトがあって、自分が2年目のときは斎藤佑樹(日本ハム)さんが中心にいて。そのとき、自分のところにはまったく取材が来なくなって。そこから「そういうもんなんだな」と割り切れた部分はありますね。

―― 昨年末、関西国際空港で大谷翔平選手と間違えられたという話をシーズンオフのトークショーでしていましたよね。普通の感覚なら腹立たしいと思うんですが、そんなことはどうでもいいと感じたから、自ら話したんですか?

菊池 今年、結果を出せる自信もあったし……。結局、来年も松井君(桐光学園の松井裕樹)がプロに入ってきますよね? 来年には大谷と投げ合いをしたいとは思いますし、素直に楽しめると思います。でも、今年は「先輩・後輩対決」とか言われちゃうので、今はやりたくないです(笑)。

―― 同世代のことも強く意識していますよね。来年には同い年の大学生がプロに入ってきます。

菊池 だから、今年が勝負だと思っていました。4年先にプロに入って、「何をやっていたんだ」と言われないようにしなきゃと思ったし、「4年先に入って正解だったな」と思えないといけないとも感じていました。高校の時に試合で勝った相手に負けるのは、やっぱり悔しいことなので。いつでも一番になりたいと、強く思いますね。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る