ロッテ・西野勇士、試練を乗り越えパ・リーグ初の育成から新人王なるか? (3ページ目)

  • 佐伯要●文 text by Saeki Kaname

 試合後、今年から一軍のマスクを被るようになった捕手の江村直也は「僕の配球のせいで、西野さんの勝ちをつぶした。もっとちゃんとリードしていれば……」と西野をかばった。

 それでも西野は、冷静に自分の投球を振り返った。

「思ったようにストレートがいかなかった。ストレートがいかないから、他の球種が生きなかったということです」

 一軍でローテーションを守るという初めての経験。7月に入り、疲れもたまってくる頃だが、西野は否定した。

「疲れ? そうとは言えません。でも(調子が)落ちてきているのは明らかなので、一度自分を見つめ直す必要がありますね」

 西武との対戦は、今季3度目。研究されていると感じるか? と聞くと、すぐに答えが返ってきた。

「フォークをそう簡単に振ってこないなとは感じているけど、それが研究されたからなのかどうか……。ストレートがいつも通りなら、振ってくれた可能性もあるわけですから。今は、ストレートをもう一度立て直したい。次の登板までの間、基本に戻って下半身をうまく使うことを心がけます」

 その視線は、しっかり前を向いていた。

 今、西野は最初のカベにぶつかっている。そして、これから先も夏場の疲労を乗り越え、研究してくる相手を上回らなければ、勝ち続けるのは難しくなる。だが、下を向いている暇はない。エースの成瀬が不調のため二軍で調整中の今、次の登板では勝つことが求められる。また、7月19日から開催されるオールスターに監督推薦で初めての出場が決まっている。

 そして、パ・リーグでは初となる育成出身選手の新人王獲得への期待も高まっている。実現するためには、現在7勝で並ぶ則本昂大(楽天)や二刀流で話題の大谷翔平(日本ハム)らライバルたちとの争いに勝たなければいけない。

 高く跳ぶには、一度低くしゃがむことも必要。西野にとって、今がその時期なのだろう。まずは、ストレートを立て直す。そうして最初のカベを飛び越えれば、次のカベにも立ち向かっていけるに違いない。

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