吉井理人が語る「なぜ2年目のジンクスが起きるのか?」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 逆に、吉川はブルペンで投げたがるタイプ。特に調子が悪い時ほど、その傾向は強い。吉川という投手は、ものすごいボールを投げるのに、なかなか自分を信用できないというか、ネガティブ思考なところがあるんです。とにかくブルペンでは、自分の納得する球がいくまで投げ続けようとする。100球を超える時もありますし、最後の方は全力投球です。これでは疲れが取れないし、次の登板に影響するのは目に見えています。昨年、吉川にシーズン中はあまり投げ込みをするなと指示したことがありました。それが良かったのかはわかりませんが、結果的に14勝を挙げて優勝の立役者になりました。ただ、キャンプで1日何百球投げたという報道を見て、心配していたんですけど......。

 とにかく投手にとって、肩、ヒジは絶対に守らないといけないもの。そこは十分に自覚を持って取り組んでほしいと思います。

 もうひとつ、活躍した翌年によくあることが「自分のことを相手は研究してくるだろう」と思い込み、「球速を上げなきゃいけない」「球種を増やさなきゃいけない」という考えになってしまうことなんです。実際、球種を増やそうとして、これまで良かったものを失った投手を何人も見てきました。例えば、タテのカーブが良かったピッチャーがスライダーを覚えることで、腕が横ぶりになってしまいタテのカーブが投げられなくなってしまうことがよくあるのです。

 球種を増やすこと自体は悪いことではありませんが、いま持っている球種で通用するうちは変える必要はありません。それよりもコントロールを磨いたり、クイックを練習したり、やるべきことはたくさんあります。探究心を持つことは大事なことですが、いま自分が通用しているのは「なぜか?」をまず考える。そうすれば、それを生かすために何が必要かもわかってくる。無理に自分のスタイルを変える必要はありません。

 とにかくプロで結果を残したわけですから、力は絶対にある。日本ハムのコーチ時代、よく若手投手に「結果は気にするな。ただ、どんなピッチャーになりたいかは常に持っていてほしい」と言っていました。結果は運みたいなところがあります。ただ、結果がほしいために自分らしさというのを失ってほしくない。まだシーズンは十分残っています。これからの巻き返しに期待したいですね。

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