吉井理人が見た「プロ初登板、大谷翔平の86球」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • photo by Nikkan Sports

 藤浪(晋太郎)投手と比較するのはかわいそうなんですが、藤浪投手はゲームを作るピッチングを知っている。変化球の使い方、ボールの出し入れ、バッターを見ながらのピッチングなど、現時点では大谷投手のずっと先をいっています。それに逆球も少ないし、しかりと配球を組み立てながらピッチングができている。それに比べて大谷投手は、一生懸命投げているだけ。それはそれで大事なことなんですが、次のステップに進むためには考えながら投げることが必要になってきます。時間的なことを考えると、1年目で今の藤波投手のようなピッチングを身に付けるには、相当頑張らないと、そこに追いつくのは厳しいかもしれないですね。

 もちろん、あの状態で150キロを何球も出せるのですから、素質はずば抜けています。ちゃんと決まった時のボールは、間違いなく一軍レベルです。そうは打たれない球です。ただ、投手としてプロの世界で勝つには、高い安定感が求められる。昨日の試合でも何球か素晴らしい球がありましたが、その球を投げられる確率が上がれば、もっと簡単に勝てるようになると思いますし、もっと違ったピッチングができる。

 プロ初登板を果たし、「二刀流挑戦」のひとつの成功は収めたと思います。ただ、これはあくまでも始まりであって、ここからが本当の勝負になる。投手がいいのか、打者がいいのか、いろいろと議論されていますが、投手であれ打者であれ、最終的な目標をどこに置くかが重要で、もし「エースで4番」が最終目標なら、とことん突き詰めてほしい。投手としてはまだまだ課題は山積みですが、大谷投手の未知なる可能性を垣間見ることができた、そんな86球でしたね。

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