吉井理人が見た「プロ初登板、大谷翔平の86球」

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • photo by Nikkan Sports

5月23日のヤクルト戦でプロ初先発を果たした大谷翔平5月23日のヤクルト戦でプロ初先発を果たした大谷翔平 日本ハムの大谷翔平選手が、ついに投手として一軍のマウンドに上がりました。結果は5回を投げ、被安打6、奪三振2、四球2、失点2。最速157キロをマークするなど、「さすが大谷翔平」と思うところはあったのですが、昨日のピッチングを見る限り、明らかな準備不足の感は否めませんでした。まだ、絶好調の時の感覚に戻っていないと思います。

 昨日の試合で気になったのは、体の使い方です。横ぶりになってしまって、腕が頭から離れてしまう投げ方になっていました。あの投げ方だと、いい球がいってもバッターからすればあまり怖さはない。特に、左バッターは見やすかったんじゃないでしょうか。それに、シュート回転しやすい。昨日はたまたま、そのシュート回転がいい形ではまりましたが、もし大谷選手の球筋がシュート回転だとわかると、各球団の対応も変わってくるだろうし、もっと厳しくなると思います。

 準備不足で言えば、クイックやフィールディングにも課題を残しました。4月11日に千葉マリンでの二軍戦に先発した時も、一塁のベースカバーが遅れたり、バックホームのカバーに行ってなかったりするシーンがあったのですが、それも実戦での経験不足が原因なんです。キャンプでひと通りの練習は積んでいると思うのですが、シーズンが始まり、野手として試合に出るとなると、どうしても忘れてしまう。クイックにしても、試合でランナーを背負って初めて試せることだし、今後はどのようにして実戦を積んでいくのかでしょうね。

 確かに、昨日の試合に登板するまで実戦経験は少なかった。ただ、球団が一軍の試合で経験を積ませたいというなら、それはそれでありだと思います。いちばん大事なことは、大谷選手をどんな投手に育てたいかということじゃないでしょうか。

 正直、ダルビッシュ有のような絶対的なエースに育ってほしいなら、今のやり方では厳しいだろうし、相当の時間を要します。ただ、6番手で6回を2~3点に抑えてくれたらというのであれば、今のやり方でもいい。そこは球団が、「投手・大谷」の未来をどう描いているのかが重要で、それによって今後も起用の仕方も変わってくると思います。

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