西岡剛がタイガースにもたらした「化学反応」

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

キャプテンの鳥谷敬と積極的に意見を交わす西岡剛キャプテンの鳥谷敬と積極的に意見を交わす西岡剛 西岡剛が阪神タイガースに"化学反応"を起こしている。3安打2打点の活躍でヒーローインタビューを受けた開幕戦から? 打率.462と打ちまくったオープン戦から? いや、違う。2月1日のキャンプ初日から、それはすでに始まっていた。

 8年ぶりの優勝を目指す和田阪神が始動した日。練習メニューの最初にあったランニングで、西岡はキャプテンの鳥谷敬らとともに隊列の先頭に立った。移籍選手がなかなかできることではない。虎一筋22年目のベテラン・桧山進次郎は「チームに溶け込もうという意識の表れだったと思う。そういう姿がチーム内に相乗効果をもたらしたんじゃないかな」と言った。

 シートノックでは大きな声を出し、練習の合間には先輩、後輩を問わず"イジる"ことで、キャンプを盛り上げた。もちろん、バットを振るのもボールを追うのも全力。練習に取り組む姿勢でも、自然とチームを鼓舞していたように思う。

 実戦が始まると、西岡の存在感はますます大きくなった。2月13日の紅白戦(宜野座)では、第1打席の初球を三塁線へ絶妙なセーフティーバント。日本球界復帰のあいさつ代わりとばかりに"くせ者"ぶりを発揮すると、オープン戦でもヒットを量産し、走塁でも何度も見る者をうならせた。

 和田豊監督が「あれを待っていた」と絶賛したのは、3月7日の千葉ロッテとのオープン戦(甲子園)で見せた走塁だ。1点を追う初回の攻撃。ヒットで出塁した西岡は、続く大和の右前打で一気に三塁を陥れた。やや詰まった打球は、右翼手が捕れるかどうか微妙な当たり。しかし西岡は、迷うことなく二塁を蹴った。「ノーアウトで無難に行きたいところなのに、瞬時に判断したね。あれが今季やろうとしている走塁。見ている選手も『これだ!』と思ってくれたと思う」と和田監督。大和が二盗を決め、一死後、4番・新井良太の適時打で逆転に成功したことで、西岡の走塁はさらに価値を増した。

「塁に出れば、外野の守備位置と風を常に見ているので。打った瞬間に打球判断をしっかりできましたね」

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