吉井理人が語る「投手の育て方にみるセ・パの違い」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

 昨年の日本シリーズで、私がコーチを務めていた日本ハムが巨人と対戦し、第1戦で吉川(光夫)がKOされたんです。あの時、吉川のスライダーを簡単に見逃す巨人打線を見て、「クセを見つけられてしまった」とすぐにわかりました。それがフォームからなのか、配球からなのかわかりませんが、とにかくクセがばれていたことだけは間違いない。まさか第1戦からばれるとは思っていなかったので、正直「これはヤバい」と思いました。結局、2勝4敗で敗れて日本一を逃したのですが、データや分析に関してはセ・リーグの方が徹底しているのかもしれない。

 あと、今の野球で注目しているのが外野の守備力なんです。ここ最近のパ・リーグの外野手のレベルは本当にすごい。陽岱鋼(日本ハム)、聖澤諒(楽天)、糸井嘉男(オリックス)をはじめ、足が速くて肩がいい選手がゴロゴロいる。中田翔もバッティングに目がいきがちですが、彼の守備力はすごいものがあります。

 昔からパ・リーグは、西武には秋山幸二さんがいて、オリックスにはイチロー、田口壮がいるなど、ものすごい外野手が揃っていた。そうした伝統は今もしっかり受け継がれています。二塁打がシングルになり、ヒットがアウトになる。投手にとってこれほど心強いことはない。広い球場があって、そして鉄壁の外野手がいる。こうした環境で育つと、スケールの大きい投手が出てくる可能性は高くなりますよね。それが今のパ・リーグを支えているように思います。

 最後に、自分の体験談をひとつ。セ・リーグの投手は打席に入りますよね。実は、投手にとってあれはすごく勉強になるんです。パ・リーグにいた時は、自分のピッチングのことだけ考えていたのですが、打席に入ることによって、打者心理がわかってきたり、どんな球が打ちにくいのかもわかってくる。セ・リーグに行ったことによって、ピッチングの幅がものすごく広がりました。ヤクルトでの3年間があったからこそ、メジャーのマウンドに立てたのだと思います。だから、二刀流に挑戦している大谷翔平(日本ハム)も打席で何を学び、ピッチングにどう生かしていくのか楽しみですね。

 セ・パの違いはあれど、それぞれにいいところがあって、それぞれに伝統がある。どっちがいい、悪いではなく、こうしたものはしっかりと受け継いでほしいと思います。ただ交流戦は、これまでと違うことを経験できる絶好の場です。楽しむことも大事ですが、何かを感じて、よりスケールアップしてほしいと思います。

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