名球会ブームも、もう200勝投手は現れない? (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 photo by Abe Tamaki
  • 荒川祐史●写真 photo by Yuji Arakawa

「先発投手は中6日のローテーションが普通になり、昔に比べて登板回数が減ってきています。いま、シーズン30試合に先発する投手はほとんどいません。エース級の投手でも25試合ぐらい。それに分業制が進んで、先発が早い回で交代するケースも増えました。例えば、0-2で負けていて、3点目を取られた時点で交代という場面をよく見ます。3点差なら、それほど大差といえないと思うのですが......。いずれにしても、早い回に交代させらえると、なかなか先発に白星がつくのは難しいですね」

 こうした戦術の変化とともに見逃せないのが、メジャー挑戦だ。日本で実績を上げた投手が、さらなる高みを目指しメジャーに挑戦することがひとつの流れになりつつある。近年でいえば、黒田博樹(ヤンキース)は日本で103勝してメジャーに挑戦し、ダルビッシュ有(レンジャーズ)は93勝してから海を渡っている。

「ローテーションに入ることができれば、メジャーは試合数が多いし、登板する機会も増えます。それに日本のように早い回で降板させられることはほとんどない。だから、日本にいる時よりも勝ち星が増えることは十分に考えられます。おそらくローテーション投手としてバリバリやっている黒田やダルビッシュは、200勝を達成する可能性は高いでしょう。ただ、ローテーションに入ることが容易ではありません。日本で実績を残した多くのピッチャーがメジャーに挑戦しましたが、ローテーション投手として活躍したのはほんの一握り。先発からリリーフに転向した投手もいるし、メジャーのマウンドに上がれない選手もいます。それだけメジャーで勝ち星を挙げることは大変なことなんです」(吉井氏)

 しかし、可能性は別として、メジャーに行くような投手は、200勝という数字をそれほど気にかけていないのではないか。いや、それ以上に、若い投手たちの中で勝ち星に対する意識自体がたいぶ変わってきているのではないか。

 昨年、カープの前田健太にシーズンを振り返ってもらった時、防御率(1.53)はトップだったし、勝ち星も14勝(リーグ2位)をマークしたが、いちばん嬉しかったのは200イニングに達したことだと言っていた。

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