藤浪+榎田、そして......。阪神に「投手王国」の予感あり (2ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 もうひとり、先発で輝きを放つのは藤浪晋太郎だ。大阪桐蔭高時代に、エースとして甲子園春夏連覇を達成したゴールデンルーキー。「高校時代は毎日投げて調整していた」という藤浪に球数制限を設けるなど、球団は綿密な育成計画を立てた。そして"タダ者ではない"18歳は、首脳陣が段階毎に与える課題を難なくクリア。開幕前には、和田豊監督が「ここまで非常に順調。むしろ、1回つまずいて開幕を迎えたほうがいいかなと思うくらい」と言ったほどだ。

 プロ初先発となった3月31日のヤクルト戦(神宮)は、6回3安打2失点とゲームを作ったものの、味方の援護なく初黒星。雨の影響でリリーフに回った4月7日の広島戦(マツダ)は、2イニング目に3四球を出し、さらには三盗も許して1失点と乱れたが、これらは、藤浪が"甲子園の申し子"であることを証明するための序章に過ぎなかった。

 プロ3戦目は4月14日、甲子園でのDeNA戦。登板前、「僕自身にこだわりはありませんが、ファンの方は甲子園での初勝利の方がいいと思う。期待してもらっているなら、応えられるようにしたいです」とコメントをしていた藤浪は、6回5安打無失点でプロ初勝利。続く4戦目も甲子園で、2度目の対戦となるヤクルトを相手に、7回を2安打無失点の圧巻の投球を見せた。球数はわずか83球。「完投しろと言われればできました」と余力を残しての降板で、高校時代から続く甲子園での連勝を11に伸ばした。

 経験の浅いふたりに頼らなければいけない状況では苦しいが、決してそうではない。エース・能見は4月16日の巨人戦(東京ドーム)で左手中指の爪を割るアクシデントに見舞われ、翌週、登板したのちに登録を抹消されたが、時間はかからない見込み。4月9日には12球団一番乗りで完封勝利も挙げており、ローテーションの軸であることに変わりはない。

 また、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場した能見に代わって開幕投手を任されたメッセンジャーと、3年ぶりの2ケタ勝利を狙うスタンリッジの両助っ人も健在。岩田稔は開幕から3試合連続で初回失点という同じ"過ち"を犯してファーム調整となったが、その穴は7年目の小嶋達也が見事に埋めた。4月20日のヤクルト戦(甲子園)。「きょうダメなら次はない」と悲壮な覚悟でマウンドに上がった小嶋は、6回までなんとノーヒット。7回にヒットを許したものの1安打無失点の好投で、実に555日ぶりの白星を手にした。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る