【WBC】メジャースカウトは「侍戦士」をどう見たか

  • 永塚和志●取材・文 test by Nagatsuka Kaz
  • photo by AP/AFLO

 まず、答えてくれた複数のスカウトが口を揃えたのが、田中と前田がメジャーでも十分に活躍できるということだ。最初に話を聞いたスカウトA氏は「彼らは今年の日本でトップ2と言ってもいい投手。ビッグリーグ(メジャーリーグ)でも間違いなく活躍できる素材を持っている。松坂やダルビッシュのようにね。何勝するかとか、どんな数字を挙げるか、とかまではわからないけどね」と言えば、別球団のスカウトB氏は「メジャーチームで先発ローテーションの2、3番手は担えるはず」と語る。

 ただWBCでのパフォーマンス自体は、田中と前田は明暗を分けた。田中は、侍ジャパンのエースとして期待されながらNPBで使用している統一球よりも滑るとされるWBC球への対応に苦慮したこともあって、2次ラウンドから先発を外れ、リリーフに回った。対して前田は、合宿から強化試合までは調整の遅れから苦しむも、大会に入ると抜群の安定感を見せた。

 だが、その点は早合点してはいけない。「まだ3月だし、通常ならスプリングトレーニングの時期で準備ができていない。これは大きな大会だけど、この時期で抜群の活躍を見せろなどというのは無理な要求だよ」とA氏が言うように、WBCでの出来はあくまで参考でしかない。

 B氏は、毎回、開催時期の早いWBCにきっちり備えてくる日本人選手に対して「本来ならプレシーズンモードであるはずなんだから、これだけ早い段階から調整し、戦える状態に持ってきているのはたいしたものさ」と話す。

 と、以上のように、一応の話をしてくれたのだが、田中であれば田中のどういうところが良いと考えているのか、といったような具体的なところは、突っ込んでもなかなか話してくれない。ダルビッシュがメジャーに行く前までは、もう少し話してくれていたような気もするのだが、上述したように、球団の上層部から箝口令(かんこうれい)が敷かれているのだろう。

 そこで、スカウト事情に詳しい記者に意見を聞いてみた。

 ベン・バドラー記者は福岡での1次ラウンドの取材で来ていた外国人記者の1人。アメリカの有名な野球専門誌「ベースボール・アメリカ」でスカウトやプロスペクト(ドラフト候補や将来有望なマイナーリーグ選手)などをカバーする彼は、「WBCはスカウトにとって格好の大会」と言う。

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