【WBC】アマチュア最強は過去の栄冠!?それでも侮れないキューバの「武器」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨年11月に行われた親善試合でも涌井秀章から本塁打を放ったグリエル昨年11月に行われた親善試合でも涌井秀章から本塁打を放ったグリエル 昨年11月に侍ジャパンの親善試合で来日以後、キューバについて「怖い打線に間違いはない。しかし、決して恐れるほどではない」という認識が高まっている。高代延博コーチを取材した時も、「一発だけ気をつければ、それほど怖い打線じゃない。むしろ韓国の方が怖い」と言い切った。そうした要因のひとつは、これまでのキューバはクリーンアップでも足を使い、セーフティバントを仕掛けてくるなど、小技にも長けていた。だから投手は、多くのことに気を使いすぎるがあまり集中力が欠け、イニングの序盤あたりに連打を浴び、ビッグイニングを許したりするケースが多かった。

 ところが最近の、とりわけ今大会のキューバ打線は、1、2番や下位しか小技を見せない。5番に入るアブレイユは足の速い選手だが、小技を仕掛けてくるタイプではない。だから、ひとりひとりを丁寧に攻めていけば、連打を許す危険が少ない。

 もう一点、キューバ打線は基本的に共通して外角のストレートに狙い球を絞って打席に入ってくる。特に右打者はその傾向が強い。言い換えれば、初球に内角を攻められると対処ができない。来日する前の台湾での直前合宿と練習試合を見る機会があったが、グリエル、アブレウ、ベルといった右のパワーヒッターほど外角に意識が強く、右ピッチャーならインスラ(インコースのスライダー)を投げると簡単にカウントを取れる。そして外角にフォークやチェンジアップの落ちる系を投じれば、空振りやボテボテの内野ゴロに打ち取られる。そんな光景をリプレイのように何度も見せられた。

 もちろん、キューバ打線も対応策を考えてくるだろうが、それでも内角に強い球を投げられる投手ならば、かなりの確率で凡打に仕留められるはずと見ている。むしろ、長打を恐れて慎重に外角を突こうとしすぎると、かえって甘くなるリスクもある。リーチが長い打者が多いだけに、外角一辺倒は危険。内角でカウントを稼ぎ、外の変化球で仕留める。この投球ができれば、そう得点を許すことはないだろう。

 むしろポイントになるのは、キューバ投手陣から日本の打線がどれだけ得点できるかにかかっている。この点に関しては、昨年の親善試合や今大会の打線を見る限り、正直言って心許ない。ただ、キューバ投手陣の特徴をとらえれば、それほど苦にする相手でもない。

 まず、150キロを超える投手は、先発のアルバレス、抑えのガルシアだけ。ほとんどが、140キロ台中盤で、いわゆる"動くボール"で打ち取るタイプ。それはそれで打ちあぐむ可能性はあるが、軌道さえイメージできれば十分に対応できるだろうと高代コーチは言う。

「動く球は見ていってはダメ。反応で対処しなければいけない。その点、糸井(嘉男)や内川(聖一)などは、期待できると思う」

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