【WBC】前田健太は復活。もうひとりの柱・田中将大は大丈夫か? (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 東尾修投手総合コーチは、降板の理由をこう話した。

「嫌な点の取られ方をしていた。今日の試合は絶対に落とせないということで、早めの継投となった」

 一方、首脳陣の不安を一掃するピッチングを見せたのが、中国戦に先発したもうひとりの柱、前田健太だった。ちょうど2週間前、まるで別人のようなフォーム、力のないストレートで右肩の不安を露呈していた前田が、変化球主体のピッチングで、5回をわずか56球で投げ切ったのだ。格下相手の中国とはいえ、球数制限のあるWBCにおいて、球数を要しない理想的な省エネピッチングだった。

「いろんな報道もありましたし、僕自身も不安な気持ちでした。初めてのWBCはものすごい緊張感でした。(中国戦は)今後を見据えて、1回でも多く投げたいなと思っていました。第2ラウンドではもっともっとプレッシャーがかかってくる。そこで結果を残したい」

 2戦を終えて、ふたりのエースは明暗が分かれた。与田剛投手コーチは、前田のピッチングを「素晴らしい結果を残してくれた」と評価し、今後の戦い方を次のように語った。

「マエケンは球速も出ていたし、コントロールも良かった。スライダーが抜けるところもあったけど、試合の中で修正できていた。投手全体に言えることですが、これからは強敵相手になるので、左右高低に丁寧に投げ分けることが必要になる。第2ラウンドの先発のパターンは、2つ3つ考えている」

 そして、6日に行なわれるキューバとの第3戦では、先発を大隣憲司に託す一方で、田中をブルペン待機させ、試合展開によっては登板させることも示唆した。田中の配置転換を視野に入れながら、テスト登板を課して復調を待つ。そんな心境だろう。いずれにしても田中の出来が今後の展開に大きな影響を与えることは間違いない。田中は言う。

「今の僕にできることは、気持ちを切り替えてしっかり準備することだけ。まだ試合は続くので、もう一度、僕らしいピッチングを見せたい。正直、このままでは終われない」

 田中将大と前田健太――若きエースが並び立ってこそ、侍ジャパンの快進撃が始まるのだ。田中の完全復活に期待したい。

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