【WBC】笑顔に隠されたキャプテン・阿部慎之助の決意

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

キャプテンでありながら、4番・キャッチャーの重責も担う阿部慎之助キャプテンでありながら、4番・キャッチャーの重責も担う阿部慎之助 日本代表が壮行試合のオーストラリア戦に連勝した翌日の、2月25日。

 予定されていた練習が休みになったのにもかかわらず、日本代表のキャプテンを務める阿部慎之助は、ひとりで大阪ドームにやってきた。グラウンドに出て外野沿いを歩くと、ベンチ裏で過ごすこと、小一時間。ブルペンに籠もっているとか、マシンを使ってバットを振っているとか、いろんな噂が飛び交っていたが、阿部は帰りがけ、意外なことを口にした。

「体操しただけだよ。バットは振ってません。久しぶりに緊張感のある試合をしたんでね。疲労してたから、風呂に入りに来た。ここの風呂が好きなんですよ。貸し切り(笑)」

 あえて呑気なことを言って笑わせた後、車に乗り込む直前、ふたたび「バットは振ってないのか」と問われた阿部は、「振ってない」と答え、こう続けた。

「よくない時は、やんないんで......」

 日の丸のついたユニフォームを着てから、実戦は4試合。

 広島戦は2打数ノーヒット、紅白戦は2打数1安打、オーストラリア戦は7打数1安打。調子がよくないと自覚している阿部が残した結果は、ここまで11打数2安打、打率.182。その数字以上に、得点につながる一本が打ててないところが4番バッターとしては辛いところだ。

 それでも阿部はドンと構える。しかも普段通り、笑ってドンと構えようとしている。

 だからなのか、今の日本代表にはよく言えばリラックスムードが漂う。裏を返せばピリピリした緊張感が感じられない。練習が休みとなったこの日も、キャプテンの阿部がひとり、球場に足を運んでいるというのに、他の選手は誰ひとりとしてグラウンドに現れない。もちろん、個々に体を動かしている選手もいたのだが、この状況には正直、違和感を覚えた。

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