2013.02.25

【WBC】侍ジャパン2009「準決勝&決勝の攻防」

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Taguchi Yukihito, AFLO

日の丸を掲げながら、イチローはチームメイトと喜びを分かち合った[決勝] 日本 5-3 韓国 @3月23日・ドジャースタジアム

Final 世界16ヵ国の頂点を決める戦いは、アジアの2チームで争われた。互いに手の内を知り尽くした宿敵と、今大会5度目の対戦。決勝戦にふさわしい息詰まる接戦にケリをつけたのはイチロー。どんなフィクションよりもドラマチックなエンディングが待っていた。

世界一の投手陣とつなぎの野球。侍ジャパンの完成形があった

「みんなすごい。すごいサムライが揃って世界のつわものと戦い、堂々と勝った」

 2大会連続の世界王者に輝いた侍ジャパンの指揮官は、真っすぐに前を見据えながら、こう言った。

 選手たちに胴上げされ、3度宙を舞った、そのわずか30分前。勝利まであとワンアウトの場面で韓国に追いつかれ、延長戦に突入したときのことだった。原監督には、ある確信があったという。

「同点でせき止めて、10回を迎えることができた。冷静に考えて、うちが有利になると思った。韓国ベンチ(の控え選手)は、野手ひとり。攻撃に関しては、日本の方が余力を残していると思いましたからね」

 そして飛び出した、イチローの決勝タイムリー。これまで思うような結果を残せなかった日本のリーダーを、原監督は信用し続け、「(あのヒットは)生涯忘れないでしょう」と、最上級の賛辞を贈った。そして先発・岩隈も、「イチローさんのヒットで勝利を確信しました」と言うように、最後の最後に決めたのは、やはりイチローだった。

 当の本人は、こう振り返る。

「めちゃくちゃいろんなこと考えていました。本当は無の境地でいたいんですけどね。ここで打ったら、『俺、(特別な何かを)持ってるなー』とか、『今、ごっつい視聴率だなー』とか。そういうときは大抵、いい結果は出ないものなんですけど、出ましたからね。ひとつ、壁を越えたような気がします」

 あの痺(しび)れるような緊張感の中、そんなことを考えていたとは、さすが世界のイチローである。

 世界といえば、もうひとり。松坂もまた、2大会連続でMVPを受賞する活躍をみせた。「MVPは僕じゃない。岩隈だと思っている」と謙遜(けんそん)するが、「年下に、言葉でなく行動で示すことを意識した」と、今大会を振り返る。

 決勝の試合前、イチローはダグアウトで「世界一、行くぞ!」と吼え、チームメイトとともに、興奮渦巻くスタジアムへ駆け出していった。

「聞こえました? 普段は言わないんですけどね。今日だけは......」


『Sportiva増刊 WBC2009総集編』(2009年3月28日発売)より転載

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