【WBC】侍戦士28名決定。山本監督はこのメンバーでどう戦い抜くのか? (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 山本監督からすれば、広島戦、紅白戦と貧打にあえぎ、標榜する「つなぐ野球」が形にならなかったために、より打力のある選手を残したのだろう。会見の席で山本監督はこう語った。

「(野手が)12人しかおらず、頻繁に選手を入れ替えられない。足を持っている選手というのはたくさんレギュラーでいるということも踏まえ、点を取ることも考えないといけない」

 だが、過去の大会を見てもわかるように、打ってつなぐことは容易なことではない。そうした状況で、いかにして次の打者へつないでいくのか。ランナーが相手投手を揺さぶり、バッターも様々な仕掛けで動揺を誘い、得点を奪っていく。こうして挙げた貴重な得点を、投手を中心とした鉄壁の守備陣で守り抜く。これこそがWBC連覇の原動力となった「スモール・ベースボール」であり、当初、山本監督も思い描いていた野球だった。だからこそ、守備と足のスペシャリストである聖澤の落選は残念でならない。

 特に国際大会では、たったひとつの走塁、外野手のワンプレイが勝敗に直結することも珍しくない。北京五輪では、レフトを守ったG.G.佐藤の度重なるエラーが相手に流れを渡す結果となり、前回のWBC決勝韓国戦の5回裏には内川によるレフト線の当たりの好捕、そして好返球が、韓国に傾きかけた流れを断ち切った。外野手のワンプレイに天国も地獄も見ている日本だけに、一抹の不安が残る。

 ケガ人が続出し、全体的に選手のコンディションが低調のため、山本監督も「戦術ありきのメンバー選考」というより「メンバーありきの戦術変更」を強いられたのが宮崎合宿だった。だからこそ28人が決まった今、どういった戦い方でWBCに挑むのかを決断し、すぐに選手に伝えなければならない。

 ブラジルとの第1ラウンド開幕戦は3月2日。現時点において、いまだチームの骨格が見えてこない「山本ジャパン」。先発、抑え、戦術……限られた時間の中で決めなければいけないことは山積みだ。いずれにしても、この非常事態を脱するのは、山本監督の戦術眼と決断力しかない。

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