【WBC】
今の前田健太は「日の丸」のために無理をすべきではない

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

右肩に不安の残る前田健太。強化試合でも本調子にはほど遠い内容だった右肩に不安の残る前田健太。強化試合でも本調子にはほど遠い内容だった 記者席はネット裏のかなり三塁寄り、その最上段にあった。

 見ていた位置が真後ろでなかったためボールの横の動きが見えにくく、そのせいで球種を見分けるのに、ついスピードガンの表示を頼ってしまう。

 前田健太の初球、125キロ、ボール。高めに抜けたスライダーか。

 2球目、118キロ、ボール。アウトローのカーブだ。

 3球目、128キロ、ボール。これもやや高めに外れたスライダーだろう。

 これで3ボール、ノーストライクとなって4球目。

 ここで、前田はほぼ真ん中に、132キロのストライクを投げた。前田の132キロといえば、チェンジアップの球速ではあるが、いやいや、初回の先頭バッターに対し、3ボールからの4球目、ストライクを取りに行くのに変化球はあり得ない。

 ということは、ストレートが132キロなのか。

 まさかと思って、前の3球を思い起こす。初球の125キロ、3球目の128キロは、よもやストレートということはあるまいな。

 しかしながら、その130キロ前後の球はすべてストレートだった。そもそもフォームにしても、前田らしいしなやかさが感じられない。立ち投げで、肩が抜けないよう、抑え気味にそろりと腕を振っているように見える。

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