【プロ野球】目指すはエースで4番。大谷翔平がいま最優先すべきことは何か? (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 しかし、大谷は両の腕に二本の長い太刀を持とうとしている。そして、ファイターズはそれを本気でバックアップしようと考えている。栗山英樹監督はこう言っていた。

「今年はドラフト1位を2人獲れたようなもの。ピッチャーの大谷翔平と、バッターの大谷翔平(笑)。どちらもドラフト1位クラスの逸材なんだから、そりゃ、二刀流だってやりたくなるでしょ。みんな、プロ野球では無理だよって言うけど、最初から無理だと言ってたらすべてが無理。簡単にイメージできるのは、野手でレギュラーを獲って、リリーフでマウンドに上がるという二刀流なんだけど、彼がイメージしているのは、エースで4番なんだよね。我々の感覚ではバッティングは必ず4番になれる素材なんだから、あとはエースになれるだけのものをどうやって作っていくかということ。それをこっちも必死で考えていかないとね。」

 投手と野手の両方で勝負する――しかも投手としても野手としても、一流ではなく、超一流を目指そうという前代未聞のチャレンジ。ドラフト1位での指名が確実な高校生が卒業してすぐにアメリカに渡り、メジャーのスーパースターを目指すという"パイオニア"を夢見ていた大谷は、だから、いったんアメリカ行きを封印した。日本でも別の"パイオニア"を目指せるという新たな夢をファイターズに掲げてもらったからだ。

 高校野球までは珍しくない"エースで4番"をプロの世界で実現したという話は聞いたことがない。かつては、38本という投手最多の通算ホームラン記録を持つ金田正一、同じく投手最多の通算500安打を記録している別所毅彦、延長戦までもつれ込んだ0-0の試合で自らサヨナラホームランを打ってノーヒットノーランを達成したという江夏豊、1試合3ホームランを記録した堀内恒夫、甲子園で史上2位の通算6ホームランを放った桑田真澄、普段は打席に立たないパ・リーグのチームに所属しながら交流戦が行なわれた甲子園で特大のホームランを打った松坂大輔など、バッティングのいいピッチャーは過去にいくらでもいた。それでも、子どもの頃からの"エースで4番"を貫いたプロ野球選手はひとりもいない。だから、そんなことが叶うはずがないとすぐに思ってしまう。

 しかし、大谷はこう言った。

「好きなのは『先入観は可能を不可能にする』という言葉です。自分で決めつけるのはイヤだし、できないと思ったら終わりだと思います。160キロを投げると目標を立てたときも、できると思って3年間、やってきました。無理だと思ったらできなかったと思います」

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