【プロ野球】二刀流挑戦。未知なる不安を大谷翔平はどうクリアしていくのか? (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

 日本ハムOBで、昨年は横浜DeNAの一軍守備・走塁コーチを務めていた現・評論家の白井一幸氏は、「投手が野手練習をすることはまったく無駄にならない」と言う。

「投手は長距離を走ったり、真っ直ぐダッシュしたりするトレーニングが多いんですけど、実際の投球動作には複雑な動きが多く入っている。単純に走り込むトレーニングだけでなく、内野手のようにダッシュする中で急に止まったり、切り返しをしたりする動きはピッチングの動きに少なからず生きてくる。ピッチングは瞬発力が肝心ですが、投手練習にその瞬発力を培う要素は少なく、逆に内野手の練習には多分に含まれています」

 栗山監督は大谷を守備の要である「遊撃手」として育成する考えを示しているが、白井氏は次のように語り、大谷の挑戦にエールを送った。

「内野手はスローイングが重要視されるので、当然、練習でもスローイングの数が増える。するとヒジや肩をケガする不安はどうしても生まれます。でもやっぱり、楽しみの方が大きい。二刀流に挑戦することによって、どっちつかずになったり、デビューが遅れたりする可能性はあるかもしれませんが、挑戦するだけの可能性を感じさせる選手であるのは間違いないと思います」

 二刀流の成果を早急に求めるほど18歳の大谷にとって酷なことはないし、結果が出ないからといって投手あるいは野手どちらかの挑戦を見切るにはあまりに惜しい逸材である。栗山監督も、長い目で大谷の成長を見守ると明言した。

「過去に二刀流の前例がないから不安はあるし、(指揮官として)責任も感じる。ただ、前例がないからこそ、やりやすい面もあると思う。知恵を振り絞って成長を見ていきたい。練習内容もまずはピッチャーの瞬発系の動きと、バッターの反応系の感覚さえつかんでくれればいい。実戦練習はやっぱり打者としての方が先になるのかな。ただ、入団してすぐのケガは、これから野球人生にも尾を引くと思うし、それだけは絶対にさせてはいけない。慌てる必要はないし、デビューに3年かかってもいいと思っている」

 二刀流挑戦という大きな注目の中、他の選手の倍の練習をやらなければならない大谷が、キャンプインを目前に「焦り」の気持ちが生まれても不思議ではない。だが、その焦りこそ二刀流挑戦の出鼻を挫く。今は、周囲のせっかちな期待や評価に惑わされることなく、大谷自身が将来どんな選手になりたいのかを考え、今は自分の信じた練習メニューに取り組んでほしいと思う。

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