【プロ野球】英智×小田幸平が語る「オレたちのドラゴンズ愛」

  • 石田雄太●構成 text by Ishida Yuta

小田 アンタがドンピシャ当てるからやん、ポールに。

英智 ポールに当てようとは思ってないんですよ。そのへんの感覚、わかる?

小田 目安でしょ。自分でもスタンドに届くのはわかってたけど、万が一、届かんかったらアカンと思って、一番近い100メートルのポールをめがけて投げたら、当たってしまった。ということは、距離的には余裕で届いとったってことやね。100人いたら、オレ以外の99人は、『英智、まだできるじゃねえか』と思っただろうな。

英智 うん。

小田 だって、遠投すれば軽く100メートルを投げるし、試合前に計る10メートルとか20メートルのダッシュだって、いまだにヒデが一番速い。そういうところだけを見たら、普通、『まだできるでしょ』『あんだけ投げられるやん』って思うよね。

英智 思うかもね。でもあれは、自分の中には『どうだ、まだできるだろ』というものはなかったよ。そんな気持ち、一切なかった。もしかしたらみんな、はき違えちゃうところなのかもしれないけど、神に誓って、『どうだ、オレはまだやれるだろ』っていうつもりでは絶対に投げてない。最後、自分で納得して終わりたかっただけで……。あの遠投は、強く生んでくれたかあちゃん(母親)への感謝を表すためだった。かあちゃんは、何回誘っても『私はそういうところには行かない』って球場に来てくれなかったからね。それで何か、かあちゃんに映像で届けられることはないかと考えて、遠投を思いついた。まぁ、でも、本当のところは自分で満足したかったんだよね。要は、自分はこれぐらいなんだと、これが最後なんだということを証明して、自分で納得したかった……。そういうふうに、終わってみて思った。自分はここまでなんだと感じて終わりたかった。

小田 オレはわかっとったけどね。

英智 正直な話、2年くらい、余分に現役でやらせてもらったと思ってるから。僕なんかが乗っているレールは、レギュラーで何年もやっていた人のレールとは違うでしょ。僕の乗っていたレールはそんなに高い山じゃない。その山を越えるために、一生懸命やってはいたんですけど、自分が越えられるのはこのぐらいの高さまでなんだなというのは感じて、わかっちゃっていたので……。そこからまた登ろうという感覚はなくて、自分はここまでの高さが限界なんだなと思ってしまった。

小田 でも、オレはやめるとは思ってなかったけどね。

英智 そう?

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