【プロ野球】「育成選手制度」の運用にみる球団ごとの温度差

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 2006年に導入された育成選手制度。

 巨人ではこの年、支配下選手からの切り替えを含めて、7人の育成選手と契約している。以降、去年までに61人の選手と育成契約を結び、すでに約半分の選手が自由契約となっている。

 育成で入団し、支配下登録されたのはこれまで17人。そこからアメリカ、台湾など海外の選手を除くと13人。もっと言えば2006年以降、育成でないドラフトで指名され、入団時は支配下登録だったのに育成に切り替えられた選手が10人もいた。この数字を眺めただけでも、その年のドラフトで指名された選手と育成ドラフトで指名された選手を分けた線がどこにあったのかよくわからない、と揶揄されても仕方あるまい。しかも、これは巨人に限らずいくつもの球団に見られる事例であるが、ケガ人を育成契約に切り替えるなど育成制度を故障者リストのように運用したり、外国人を育成枠で獲得したり、育成選手に関しては“育成”という名に相応しくない、首を傾げざるを得ない事例があまりにも多すぎる。

 また、育成制度の運用が球団ごとに違いすぎていることも問題だろう。実戦経験に四苦八苦するのは育成選手の数が膨れ上がった巨人だから起こっていることで、ただ単に年俸ダウンと支配下選手の枠をあけるために選手と育成契約を交わそうという安易な球団もある。実際、このオフにはDeNAが契約更改の場で選手に年俸ダウン、育成契約を持ちかけ、協約違反を指摘されて赤っ恥をかいたことがあった(支配下から育成に切り替えるにはいったん自由契約選手にしなければならない)。逆に中日などは育成選手でもウエスタンの試合の出場機会には恵まれているし、年俸も一律400万円。70人枠さえなくなれば彼らが3ケタの背番号を背負う必要もないのに、と思ったりする。

 プロ入りは若者の人生を左右する一大事である。経費節減になるからヨシとしている球団があるとしたら、果たして本当にそうなのか、検証してみた方がいい。第2二軍だの、三軍だのと謳(うた)ってみても、アメリカとは裾野の広さが違いすぎるし、日本ではプロのレベルを保った実戦の機会が少なすぎる。これで本当に育成の場だと言えるのか。選手が育ってくると言うのか。

 育成から這い上がってきたという数少ないストーリーを一括りに美談にするばかりでは、実態は見えてこない。育成選手制度がこのままでいいはずがないのだ。そもそもが緊急避難の発想だったことを念頭に、一刻も早く現状の育成選手制度の見直しを検討すべきだと思う。

<終わり>

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