【プロ野球】門田博光からの提言「なぜ、もっとホームランを狙わない」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 長さだけではない。重さ、さらには重心と、バットへのこだわりの話に熱が入る。

「重心でも1センチ先に動かしたらどうなるのか。昔は重心の微妙な違いを体感するためにバットの芯の近くにクギを打ち込んで練習していた人もいたけど、わずか1センチ、数ミリにどこまでこだわれるかが真のプロだと思います。重さも、今は900から920グラムのバットを使っている選手もおるらしいけど、昔は940とか960グラムが当たり前で、オレも1キロのバットを使っていた時があった。飛ばそうと思えば、バットの重さは絶対に必要。じゃあ、900~920グラムのバットを950グラムにしたらどうなるのか。それを扱うにはどうしたらいいのか。要するに、そこまで考えてやって、今の結果なのかということですよ」

 昨年は独立リーグの大阪ホークスドリーム(現在は活動停止)の監督を務め、現在は社会人野球の臨時コーチとして若い選手の指導に励む門田氏。話は技術論にも広がった。

「フォームにしてもそう。スタンスを変えたらどうなるのか、70%の体の捻(ひね)りを80%にしたらどうなるか。いくらでもあるんです。大体、今の選手のフォームを見ていたら、投げるのも打つのも、捻りを入れないのがいいフォームとされている。確かに、投手からすれば腕を見えにくくするためとか、バッターにしてみれば多様化した変化球に対応するためとか、いろいろと理屈はあるんでしょう。ただ、バッターに関して言わせてもらえば、これまで飛ぶボールを使っていたため、捻りを入れない打ち方でも打球は飛んでいった。でも、飛ばないボールを使うと、その打ち方では飛距離が出ない。捻りを入れない方が確率は上がるといっても、4割は打てないでしょ。そればかりか3割打者もほとんど出ていない。考え方を変えないとアカンでしょうね」

 そして統一球導入後、日本人選手で唯一、30本塁打以上を放った中村剛也の話になった。

「昨年のオフ、あるテレビ番組でオチが、『なぜ、中村だけが打てたのか?』と聞かれて、『打てるボールだけを打ったんでしょう』と答えていた。それを聞いて、まさにその通りと思いましたよ。7、8番を打っているようなバッターが、みんなホームラン0本なら飛ばないという理屈も理解できる。でも、そうじゃない。そういう選手でも1年に何本かはホームランを打っている。ということは、いいポイントでしっかり芯で捉(とら)えればボールは飛ぶし、ホームランにもなるということ。その確率を高められるかどうかは、もう技術の話なんです」

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