【プロ野球】問題だらけの「侍ジャパンvsキューバ」。これでWBCをまともに戦えるのか? (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 まとめ役と期待する稲葉がスーツ姿でグラウンドに現れ、主将を務めるはずの阿部は参加したものの日の丸のユニフォームに袖を通した感想を聞かれ、「最高でーす」と一言だけ。東京ドームのお立ち台でファンを喜ばせる場所とは違うのだという自覚も感じられなければ、日の丸を背負うという責任感や意気込みも伝わってこない。

 キューバ戦のあと、日の丸を背負う戦いにメジャーの選手はひとりも参加しないことが明らかになった。来春、3連覇を目指してWBCを戦う日本代表は、“純国産”の布陣で臨むことになる。山本浩二監督は「国内組でより一体感を強めて、3連覇に向けて戦っていく気持ちが固まった」とコメントしたが、一体感を強める絶好の機会に、いったい何を中途半端なことをしているのかとガッカリさせられる。

 メンバーの入れ替えはいつでもできるのだから、早々に28人 を選んで、キューバとの試合はその選手をすべて招集すべきだった。試合に出られなくても、試合後の夜、食事をともにしたり、移動のバスや飛行機の中で話をしたり、試合前の練習をともにすることで、一体感が生まれてくるのに、それさえもなく、本当にこの選手をWBCに選ぶつもりがあるのか、というメンバーで、せっかくキューバと戦える試合を、何の工夫もなく迎えてしまうという厳しい現実──。

 聞くところによれば、NPBのアンケートの方法に問題があり、球団によってはWBCに出す選手と今回のキューバ戦に出す選手は分けなければならないと勘違いしていた球団もあったのだとか。そうした細かい事務的な手続きも含めたすべてのオペレーションが、あまりにも稚拙(ちせつ)すぎるのだ。いつも言うように、ユニフォームを着た首脳陣や選手のことを言っているのではない。WBCを2度も経験したプロを名乗る組織のやることなのかと呆れ果ててしまうのである。結果的にキューバに勝ったとか、シーズン開幕前のキューバは本調子ではなかったとか、そういうことはエクスキュースにはならない。

 キューバ戦に出場した選手たちの中には、今村猛や角中勝也、堂林翔太ら、輝きを放った若き侍がいた。過去、川崎宗則や西岡剛、内川聖一、中島裕之といった一流のプレイヤーが、WBCで勝負強さを発揮して、スターの階段を駆け上がったように、今回も若い芽が伸びるきっかけになることは間違いない。そういうチームの第一歩が、本当にこんな中途半端な形でよかったのだろうか。

 WBCまであと3カ月。せめてこの時期、博多で鮨屋の暖簾を下げる野球好きの大将に、「今日はあの侍ジャパンが、博多でキューバと試合しよると!」くらいのワクワク感は演出して欲しかった。11月中にはWBCサイドにメンバーを提出、12月には出場メンバーが発表される。もう、サバイバルなど必要ない。一刻も早くメンバーを固定し、選手たちに日の丸を背負うことの自覚を促し、世の中の空気を盛り上げていくことに力を尽くすべきだと思う。

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