【プロ野球】「新時代」の到来を予感させた、20歳同士の息詰まる投手戦 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

日本ハム打線を7回無失点に抑えた巨人の宮國椋丞日本ハム打線を7回無失点に抑えた巨人の宮國椋丞 そして日本シリーズ第4戦、ふたりとも7回まで投げ合い、宮國が被安打3、四球2、奪三振4と好投すれば、中村も被安打5、無四球、奪三振3の内容。ともに持ち味を生かした見事な内容だったが、投球スタイルは大きく違った。

 宮國は得意のツーシームをはじめ、フォーク、スライダー、カーブといった変化球を主体に、時折140キロ台中盤のストレートを織り交ぜ、日本ハム打線に的を絞らせなかった。

 対して中村は、ストレートと球速の差のある2種類のカーブとのコンビネーションで巨人打線を封じた。場内表示では140キロに満たないストレートがほとんどだったが、それでも巨人の各打者はことごとく詰まらされ、凡打の山を築いた。

 4時間15分の戦いを終えた試合後、宮國は「緊張はしませんでした。ストライク先行を心掛けて、普段通りのピッチングができました」と言葉少なく、報道陣の前を足早に去っていった。中村は歓喜に沸くベンチ裏で勝利の笑みを浮かべながら、「大きい舞台になるほど余計なことを考えずに投げられる。自分の力を出すこと、思い切って腕を振っていくことだけを考えていました」と、特に昂(たか)ぶった様子もなく、しっかりと自身の投球を振り返っていた。

 この日本一を賭けた大舞台で、プロ2年目と3年目の若者が力を存分に発揮し、結果を残したことに「新時代」到来の予感がした。日本ハムの新エースに成長した吉川光夫が4回4失点で降板したシリーズ初戦の試合後、吉井理人ピッチングコーチはこんなコメントを口にしていた。

「雰囲気にのまれたのか、いつものピッチングじゃなかった。攻める気持ちはあったと思うけど......。さすがの吉川も緊張したんだと思う」

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