【プロ野球】日本ハムの強さの秘密。常勝の礎を築いた「7パーセント」のこだわり (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 青山浩次●写真 photo by Aoyama Koji

 それにしても、セカンドとは......。

「確かに僕のイメージの中でも西川はサードかショートだった。でも彼は去年の春、右肩の手術をしたし、セカンドでもいけるんじゃないかと思ったけどね」

 2012年8月29日。

 ファイターズのセカンドを守る田中賢介が、札幌ドームでのライオンズ戦の試合中、一塁ベースカバーに入った際にバッターランナーと交錯し、左橈(とう)骨頭骨折および左尺側側副靱帯断裂という重傷を負った。もちろん、シーズン絶望の大ケガである。

 この日、ファイターズはライオンズに敗れて4連敗。首位に立っていたライオンズとのゲーム差も2に開いた。糸井嘉男もケガで欠き、ただでさえ暗雲漂う中でのキャプテンの戦線離脱。ここで、栗山英樹監督は大きな賭けに出た。

 西川の3番、セカンドでの起用である。

 プロに入ってセカンドの練習は続けていたものの、右肩の手術を受けたこともあって、西川の一軍での出場は代打やDHなど、バットを期待されてのものがほとんどだった。それが優勝を争う大事なシーズン終盤、セカンドを守り、しかもバッティングが評価されているとはいえ、高卒のプロ2年目、西川に『お前が糸井、田中の穴をそのまま埋めろ』と言わんばかりの3番セカンド起用。さすがに度肝を抜かれた。

 ところが西川はこのライオンズ戦で、監督のムチャな期待に堂々と応えてみせる。

 8月30日の札幌。

 3回表、ファイターズはワンアウト1、2塁のピンチを背負った。ここでエステバン・ヘルマンが放ったゴロがセカンドを守る西川の正面に飛ぶ。捕ってからボールをスムースに握ることができず、ショートの中島卓へ投げるテンポが一瞬、遅れたものの、西川はかろうじてダブルプレイを完成させた。「緊張した」というセカンドの守備を、大事な場面でなんとかこなした西川は、その裏、1点を先制した直後、ツーアウト3塁で、打席に入る。ここでも西川は牧田和久のストレートをレフト前に落とすタイムリーを放って、貴重な追加点を挙げた。4回表にはエラーを記録したものの、これもライト前に抜けそうな当たりを素早く、柔らかい動きで好捕しての悪送球。アグレッシブに一塁へ投げた結果のエラーであり、試合の終盤には俊足を活かしてサードへの盗塁も成功させた。2-0の拮抗 したゲームの中で、西川は十分すぎる存在感を発揮し、試合後にはお立ち台にも立った。

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