【プロ野球】パ・リーグ天王山。試合の命運を握る「吉川光夫VS中村剛也」に注目 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 青山浩次●写真 photo by Aoyama Koji

 そして勝負の行方を占う上で、興味深いデータがある。それは吉川と西武の4番・中村剛也の対決だ。当然、エースと主砲の対決は試合の重要なポイントになるのだが、ふたりの過去の対戦を振り返ると、それ以上の重みを持っていることがわかる。

 例えば、1年前の秋――最後までオリックスと熾烈なクライマックス・シリーズ(CS)進出を賭けた戦いを繰り広げていた西武がシーズン最終戦で対戦したのが日本ハムで、この試合の先発が吉川だった。この時、西武がCSに進出するには日本ハムに勝利し、3位のオリックスが敗れることが条件だったが、その試合で初回に中村が吉川から先制の2ラン。この一発で流れを掴んだ西武が勝利し、オリックスが敗れたため大逆転でCS進出を果たした。

 また、吉川の今季初登板となった4月1日の一戦――4回までパーフェクトピッチングを見せていた吉川だったが、5回、中村に甘く入ったストレートをレフトスタンドに運ばれ、試合はそのまま西武が1-0で勝利。まさに主砲の一振りで勝負を決めたわけだ。

 ちなみに、今年も含めこれまでのふたりの対戦成績は22打数8安打(打率3割6分4厘)。中村からすれば吉川は相性のいい投手であることは間違いないが、特筆すべきは8本のヒットのうち5本がホームランだということ。しかも5本中4本が先制アーチ。吉川にすれば何ともダメージが残る結果だ。その中村との対戦結果も大きく影響し、これまでの吉川の対西武戦の成績は2勝8敗(今季は1勝2敗)。再び、野田氏は言う。

「ピッチャーにしたらそれだけ打たれているので、意識は当然あるでしょう。ただ、今年は西武にふたつ負けたあと、8月11日の対戦では完封しましたよね。普通に投げれば、今の吉川ならそう点は取られないでしょう。首位攻防の緊張感の中で、吉川の中に対西武、対中村はどう映っているのか。そこは興味のあるところですね」

 ただ、野田氏も語っていた8月11日、吉川が完封して自らの対西武戦の連敗を7で止めた一戦に、中村は左ヒザ痛で先発出場していない(代打で出場)。果たして天敵が4番に座る今回の対戦では......。もしかするとこの試合の結果が、そのままペナントレースの行方を決めてしまうかもしれない。

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