【プロ野球】セの捕手として初の快挙達成なるか。阿部慎之助の三冠王の可能性を探る (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 まずは対戦カード。阿部が今シーズンもっとも本塁打を打っているのが横浜DeNA戦(5本)だが、このお得意さんとまだ5試合を残しているのだ。CS進出を争うヤクルトや広島相手だと、絶好調の阿部が勝負を避けられる可能性もあるが、順位はほぼ確定し、来季に向けて若手の起用も増えているベイスターズならそうした心配はない。

 そして東京ドームでの試合を多く残しているのも有利な材料だ。ジャイアンツの残り17試合のうち東京ドームでの試合は8試合。今シーズンの阿部は23本塁打のうち10本を東京ドームで放っており、ホームランが出やすい球場での試合を多く残しているのは、間違いなく追い風になるだろう。

 さらに、本塁打王を争っているのがバレンティンというのも、阿部にとっては好材料ではないだろうか。というのも、スワローズ対カープ戦は6試合残っていて、CSを賭けた闘いは最後までもつれることが予想される。カープにとって、スワローズ最大の得点源であるバレンティンの一発は何としても避けなければならず、当然これまで以上に厳しい攻めをしてくる可能性が高い。それにバレンティンは好不調の波が大きく、いったん打ち出すと止まらないがスランプも長い。故障から復帰してまだ万全といえない中で、一気に阿部を引き離すまでいかないのではないか。

 もうひとつ面白いデータがある。かつてオリックス時代のイチロー(現・ヤンキース)も三冠王に肉薄した年があった。日本プロ野球史上初の200安打を達成した翌年の1995年のことだ。この年、イチローは首位打者、打点王を獲得し、本塁打も25本を放ちトップの小久保裕紀(当時ダイエー)とは3本差だった。実はこの時も30本塁打を達成した選手はひとりもおらず、3割打者も4人(今季セ・リーグも9月13日現在4人)と投高打低のシーズンだった。その中でイチローはひとり抜きんでた技術を見せつけたのだ。
 

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