【プロ野球】パ・リーグ14年ぶり野手の新人王を目指す、27歳のルーキー・川端崇義 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 手応えを感じて一軍へ復帰したのは4月21日の日本ハム戦。9番・ライトで初スタメンを果たすと、そこからレギュラーに定着。5月19日のヤクルト戦では延長11回にチームの連敗を6で止める決勝タイムリーを放ち、同22日の西武戦ではプロ初本塁打が満塁弾となりお立ち台にも上がった。あるチーム関係者は「今は人材がいないから1番を打っているけど、本来なら6、7番あたりを打たせるのが一番合っていると思う」と話すように、抜群の勝負強さを兼ね備えている。かつて阪急ブレーブス黄金時代の正捕手を務めた中沢伸二氏は川端のバッティングを次のように解説する。

「まず、迷いなくバットを振られるというのがキャッチャーにとっても、ピッチャーにとっても嫌なんです。それに川端はあれだけ強く振っているのに、決して振り幅が大きくない。もっと振り回すタイプだったらバッテリーも攻めやすいでしょうけど、コンパクトに強く振ってくるから崩されにくい。そのことが今の成績にもつながっているのでしょう」

 活躍するたびに「ドラフト8位」「27歳」のキーワードが注目されるが、本人は「そこ」に注目されることは本意でないと語る。

「年齢的にも1年目から結果を残さないといけない気持ちはありました。でも、それ以上の意識はありません。戦いが始まったら、新人選手の中のひとりっていう気持ちしかありません」

 決して多くを語るタイプではない。しかし、落ち着き払った表情で「自分はまだまだですから」と返す言葉の裏には、確かなプライドが透けて見える。

 東海大相模高時代は原拓也(西武)らと同級生で、甲子園出場経験はないが名門で4番を任されていた。高校卒業後は国際武道大に進み、2年秋、3年秋と二度の首位打者を獲得。JR東日本でも1年目から起用され、2年目には都市対抗で2試合連続本塁打を放ち、日本選手権でも打率3割8分5厘をマークして優秀選手賞を受賞。毎年のようにドラフト候補に名前が挙がっていたが、三拍子揃ったプレイスタイルは「まとまりはあるが......」という評価とも隣り合わせ。プロからの誘いがないまま時は過ぎた。

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