【プロ野球】11ゲーム差から逆転。西武に何が起きたのか?

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports

クローザーになったことで、本来の力強い投球を取り戻した涌井秀章クローザーになったことで、本来の力強い投球を取り戻した涌井秀章 奇跡の逆転優勝に向けて、西武ライオンズが好位置につけている。

 6月4日時点で、西武の借金は『9』。2年連続Aクラスのチームは、最下位に沈んでいた。しかしその後、徐々に順位を上げ、8月19日には楽天のエース・田中将大を打ち崩し、最大11ゲーム差から首位に立ったのである。借金9から首位に浮上したのは、過去4チームのみ。このままペナントレースを制すれば、球界初の偉業達成となる。

「負けなくなったのは、後ろが安定したからだよ」

 7月1日から8月21日まで21勝11敗6分けと、好調を維持している要因について、渡辺久信監督はリリーフ陣を挙げる。数字を見れば、歴然だ。6月以前と7月以降の防御率を比べると、セットアッパーの長田秀一郎は3.00→0.50、ランディ・ウィリアムスは2.77→0.00、そしてクローザーの涌井秀章は7.13→1.31。どれも劇的に防御率を上げている。

 特に大きいのが、涌井の復調だ。

 シーズン序盤は先発として開幕戦から3連敗を喫し、渡辺監督も「真っすぐのキレも変化球も悪い。ボールは高いし、緩急をつけられない」と酷評する状態だった。

 そこで指揮官は、守護神不在というチーム事情もあり、5月4日のロッテ戦から涌井をブルペンに回した。女性問題により5月22日から1カ月間、登録を抹消されたが、復帰以降は安定感のある投球を披露。「1イニング限定で投げれば、腕が振れるようになり、球威も戻る」という渡辺監督の読みも当たり、新クローザーとなった涌井は、本来の力強いストレートで相手打者をねじ伏せている。

 涌井の復調は、ほかのブルペン投手にも好影響を与えた。シーズン序盤はセットアッパー、クローザーと役割のはっきりしていなかった長田は、『涌井効果』を口にする。

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