【プロ野球】若手台頭でカープ15年ぶりAクラスが見えてきた

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 例えば、7月14日の横浜DeNA戦などは、今季の広島を象徴する試合だった。6月末に緊急補強した新外国人エルドレッドが前日に死球を受け欠場。すると「6番レフト」でスタメン出場の迎祐一郎が驚きの2ホーマーでヒーローになった。試合後の野村監督も「出た選手が競争して結果を出してくれている」と語っていたが、山崎氏は自らの現役時代の記憶を重ねながら、こう語る。

「カープの黄金期と言われている70年代中盤から80年代にかけては、山本浩二さん、衣笠(祥雄)さん、水谷(実雄)さんと中軸にチームの顔と言われる人が座っていて、他のメンバーが割って入る余地がなかった。一軍、二軍の入れ替わりもほとんどなかった。しかし、91年の優勝の時は違いましたね。野手陣も若手がどんどん台頭してきたところにベテランが上手く絡んでいた。感じとしたら今のチームに似ていると思います」

 91年は、24歳の野村謙二郎が3番を打ち、19歳の前田智徳、20歳の江藤智が先発に名を連ね、チームに新しい風を吹き込んだ。そこに選手会長だった山崎氏や達川光男氏といった優勝の味を知るベテランがチームを束ねた。今季も広島も、中軸に岩本、堂林、前後にも丸佳浩、菊池、安部ら若手が顔を揃え、そこに石原、天谷、廣瀬、赤松真人らの中堅、ベテランが絡む。この状況は、91年に重なる。

 さらに投高打低であることもよく似ている。91年は最多勝、最優秀防御率のタイトルを獲得した佐々岡真司が新エースとして台頭し、ストッパーには最優秀救援投手の大野豊がいた。投手陣は充実していたが、一方でバッティング成績を見るとチーム打率は.254(リーグ4位)、チーム本塁打は88本(同5位)。さらに56敗のうち完封負けが15試合もあった。

 今季の広島も、特に前半戦はまったく打てなかった。例えば5月31日終了時点の数字を見ると、チーム打率はリーグワーストの.214。1試合平均得点2.41もワーストだった。ところが6月1日から7月27日までの37試合を加えると、チーム打率はリーグ5位ながら.239とアップし、1試合平均得点も3.25まで上昇した。防御率がほぼ変わっていない中で得点力が上がったわけだから、おのずと勝率も上がっていった。

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