【プロ野球】後半戦への大きな一歩。斎藤佑樹が球宴で掴んだ「ある感覚」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 この日の斎藤は、初球を打った6人を除く25人のバッターのうち18人に対して、初球がボールになっていた。さらにその18人のうち、2球目もボールとなってツーボールにしてしまったバッターも8人いた。吉井理人ピッチングコーチがこう言った。

「今日はブルペンですごくいい球を投げていたのに、結局、かわしに行くピッチングが多くて、自分のピッチングをしてない感じで制球を乱した。積極的に行って欲しかったね」

 吉井によれば、初回からコーナーへ変化球を決めようとする“綺麗な”ピッチングをすると、後半になって緩いボールが効かなくなってくるのだという。

「そういうことは知ってるピッチャーだと思うからこそ、残念。もっとシンプルにやって欲しいよね。キャンプから真っすぐを練習してきて、真っすぐが一番、投げミスが少ないんだから……マー君(田中)は大胆にストライクゾーンで勝負して、追い込んでからいいところに決めていたでしょ。佑ちゃんは初めからいいところに決めようとして、ボール、ボールになって、ストライクを投げて打たれた。変化球主体の配球には意図があったと思うけど、その作戦が失敗、しかも酷い失敗に終わったということ。それをこれからの佑ちゃんにとってプラスになるようにしたいね」

 ふたたび、大阪の夜。

 オールスターでつかんだアウトローへの一球の手応えが忘れられない斎藤は、何度もそのボールをリリースした瞬間を腕だけのシャドウピッチングで再現して、「そうそう、この感じなんだよな」と呟いていた。

「投げる直前、トップの位置を作るとき、どうしても早く力が入り過ぎて、体が浮き上がってしまっていたんです。そうすると視線も上下にブレるし、思ったところへ投げられない。でも力まずに、スッとトップが作れれば、体重もスムースに移動できるし、アウトローにも狙いを定めることができるんです」

 幸いにも、斎藤の後半戦最初のマウンドはふたたび大阪になる。オールスターと同じマウンドで、あの瞬間につかんだ感覚を再現できれば、開幕直後に勝っていた時期とはまた違う、もう一段高いステージに上がった斎藤のピッチングが見られるはずだ。

「今夜は、その第一歩ですね」

 斎藤はそう言ってから、また腕だけのシャドウピッチングを繰り返していた。

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