【プロ野球】「育てながら勝つ」。前期優勝、高津臣吾監督の次なる目標 (2ページ目)

  • 大田誠(テレビ朝日 Get SPORTS取材班)●文 text by Ohta Makoto(tv asahi Get SPORTS crew)

 高校、大学時代、ずっと2番手投手だった高津は、どうすればマウンドに上がることができるのか、打者を抑えることができるのか、考えに考え抜き、厳しい境遇を自らの力で乗り越えてきた。プロ入り後も、一軍で投げるために、野村克也監督(当時)の考える野球を実践してきた。

 その考えは、しっかりと選手にも届いているようだ。

「考えてわからないことは、教えてもらっています。自分たちから聞きにいかないと、教えてもらえないので、積極的に聞きに行くようにしています。監督も、自分たちが積極的にいくというのを期待していると思うので......」と攻守の要である捕手の平野進也が話してくれた。

 高津は言う。

「考えることで、意志と意図が生まれる。チャンスに気付き貪欲に掴みにいけるか、チャンスを逃すか。最悪なのは、チャンスに気付きさえしないこと」
 
 誰よりも貪欲に自らの成長を追求し続け、チームの勝利に執念を燃やしてきた。そんな男が、勝利のために掲げた野球。それが、打者も投手も「つなぐ野球」だ。

 優勝のかかった福井ミラクルエレファンツとの一戦。3回表、先頭バッターがエラーで二塁に出塁し、無死二塁の場面。バントも考えられるケースで、9番の佑紀はヒッティング。センター前に運び、無死一、三塁とチャンスを広げると、続く1番の野呂がセンター前へタイムリーヒットを放ち、待望の先制点を奪う。さらに、無死一、二塁から打席に入った2番の平野もヒッティング。ファーストゴロの間にランナーがそれぞれ進塁し、3番の稲葉がレフトへの犠牲フライで1点を追加。続く4番の福岡がセンター前にタイムリーヒットを放ち、この回一挙3点を奪ってみせた。

 相手のミスから、ビッグイニングへつなげた、この場面こそ高津監督が掲げた「つなぐ野球」だった。特筆すべきは、優勝を決めるまでの31試合で、わずか7という犠打の数だ。これは、「投げていて、バントで1つアウトが取れると気持ちが楽になる。逆に、打ってこられるのは本当に嫌」という経験が根底にある。

 だからこそ、簡単にアウトは与えない。一死二塁よりも無死一、三塁を目指す、投手心理を知り尽くすからこその高津野球。メジャーリーグの大胆で魅力的なベースボールと、日本で実践してきた考える野球。自らが、経験してきた全ての野球を融合できた時に、高津野球は完成するのかもしれない。

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