【プロ野球】球宴ファン投票1位。いま斎藤佑樹は何を求められているのか? (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 それでも、斎藤のことを物足りないという人は少なくない。期待値が高すぎるのか、記憶が美化されているのか、あるいは斎藤にさらなる飛躍が必要なのか。

 いずれにしても、斎藤佑樹は何かを求められている。だから、足りないとか、これは違うとか、言われてしまうのだ。

 では、世の中が斎藤に求めているものは何なのだろう。

 6月22日。

 交流戦明けの初戦を任された斎藤は、今シーズン初めてホークスの打線と対峙した。福岡のマウンドに立った斎藤はホークスの先頭バッター、明石健志に初球、ストレートを投じる。低めに外れたその直後、斎藤が足元を気にしてマウンドを均(なら)した。ボールが3球続いたところでまた足元が気になって、今度は何度もマウンドを踏み固め、均した。4球目はストライクになったものの、完全にバランスを崩していた。

 それでも明石をショートゴロに打ち取り、続く本多雄一に対してもボールが先行しながら追い込んだ。依然として足元が気になる。こういうことで斎藤がここまであからさまに時間を使うのは珍しい。試合後、斎藤がその理由を明かした。

「滑ったんです。ちょっとベチョベチョして湿ってたんで......2回以降は乾いてました。1回で乾くくらいだったんで、もったいなかったなと思います」

 追い込んでから投げたチェンジアップを、本多はバットに当てることができなかった。空振り三振、と思いきや、キャッチャーの鶴岡慎也の方がミットの縁に当ててしまい、後逸した。まさかのパスボール、振り逃げである。

 滑って、投げにくいマウンド。

 せっかく奪った空振り三振。

 1塁に本多、打席には内川聖一。

 ツーアウト、ランナーなしで迎える内川と、ワンアウト、ランナー1塁で迎える内川では攻め方も変わる。ましてランナーの本多は昨年まで2年連続で盗塁王に輝いている。

 滑るマウンドでは、クイックも容易ではない。何しろ、滑ってケガでもしたら一大事だ。どうしても慎重に足を着かざるを得ない。それだけ、クイックも甘くなる。

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