【プロ野球】斎藤佑樹が語った「エースという言葉は好きです」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 それでも、開幕から一度も外れることなくローテーションを守り、首位のマリーンズに次いで2位につけるファイターズの投手陣を支えてきた。オールスターゲームのファン投票では、最終の中間発表でもトップに立っている。

 斎藤はプロ2年目の日々について、こんなふうに話していた。

「慣れてきましたね。去年は負けたらすごく落ち込みましたし、同点の試合とか、自分に勝ち負けがつかない試合に対して、納得がいかなかったんです。今日は投げた意味がなかった、一日をムダにしたとさえ思ってた。でも、そうじゃなかった。同点だったとしても6回、7回まで投げたら、その分、イニング数も稼いでいるわけだし、自分がしたいことをちゃんとできていれば、経験値としてそれが積み重なってる感じがする。そういうところは一歩ずつ、成長してる感じはします」

 どんな結果も、経験になる――。

 先発した12試合のうち、10試合で責任投手となった。12試合で74イニングを投げた
ということは、1試合平均で6回以上は投げていることになる。今年は、初めてのセ・リーグを相手に、5試合で先発を務めた。1勝3敗、防御率は3.45。決して満足できる結果ではなかったが、勝ったり負けたりというのは、一軍のマウンドに立ってこそ。去年、ケガで交流戦のマウンドには一度も立てなかったことを思えば、斎藤の言う「経験値」は交流戦でも確実に積み重なっていたはずだ。

 6月13日、札幌ドーム。

 公式戦では初めて、ジャイアンツを相手にマウンドに立った斎藤には、ある誤算が生じていた。

 この日の球審が低めに辛く、低めのストレートがボールになる。

 しかも、ジャイアンツ打線は低めの変化球に手を出そうとしない。この日、斎藤の低めの変化球に手を出したのは9番の寺内崇幸、ただ一人だった。5回表、ワンアウトランナーなしの場面で打席に立った寺内は初球、セーフティバントを試みた。それがファウルとなった2球目、寺内は斎藤の低めに沈むチェンジアップに手を出し、空振り。その瞬間、(しまった)という感情を隠せなかった寺内の顔が、この日のジャイアンツの意図を象徴していた。

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