【プロ野球】勝利の方程式崩壊、故障者続出......。それでも中日が強いワケ (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして何より、大きな変化といえば高木守道監督が新たに指揮を執るようになったことだ。開幕して2カ月が過ぎたが、高木監督の目指す野球は見えてきたのか。他球団のチーム関係者は次のように語る。

「よく監督が代わればチームが変わると言われますが、高木監督に関して言えば、前のチームをうまく引き継いでいるな、という印象です。もちろん、高木監督の中にも"世代交代"という大きなテーマはあるはず。だからといって、急ぎすぎては何もならないということも知っている。そうしたことも含め、これまでの選手を中心としながら、新たな力もうまく使っている。でもベースの部分は変わっていないので、試合の運び方は相変わらずうまいなと感じます」

 確かに、過去5年間で3回のリーグ優勝を果たしたチームだけに、勝ち方を知っているのは言うまでもない。しかし勝つこと以上に、試合の流れ、シーズンの流れを知っている選手が多いことが中日の本当の強さだと、牛島氏は言う。
 
「勝ち方を知っていると言われるが、それ以上に負けちゃいけない試合をよくわかっていますね。負けたら尾を引くような試合を拾ったり、引き分けに持ち込んだりしている。そういうところは、さすがですね」

 とりわけ牛島氏がポイントに挙げたのが、5月2日の阪神戦(ナゴヤドーム)と5月4日の横浜戦(横浜スタジアム)だ。阪神戦は同点で延長に入り、浅尾を投入したが勝ち越しを許した。しかし、その裏の攻撃で阪神の守護神・藤川から荒木雅博がタイムリーを放ち、土壇場で引き分けに持ち込んだ。そして横浜戦は2点リードの9回裏から岩瀬が登板したが、ラミレス、中村紀洋に連続本塁打を浴び、あっという間に同点。しかしその後は何とか踏ん張って引き分け。

「今年のドラゴンズは引き分けが多い。この引き分けの多さが、首位につながっていると思いますね」

 確かにここまでの引き分け数は9試合とリーグトップだ。ジャイアンツが5試合だから、この差が首位に踏みとどまっている大きな原因といえる。もし、この9試合のうち半分を落としていたら、順位以上にチームの士気が落ちていたかもしれない。最後に牛島氏が、今後の展開について語った。

「交流戦が終われば、再び3連戦、6連戦の戦いになります。セ・リーグの球団で、それに対応できる投手のコマを持っているのはジャイアンツぐらい。ただドラゴンズも、今がいちばん苦しい時期で、もう少しすれば吉見も帰ってくるだろうし、本来の状態に戻れると思います。ジャイアンツとだって遜色ない戦いができると計算しているのではないでしょうか」

 巨人にしてみれば、10連勝を記録するなど5月は16勝4敗という圧倒的な強さを見せつけたにもかかわらず、まだ首位には立てていない。この現実こそが、中日の強さを物語っているのではないだろうか。勝負どころを見極める"読み"はまだまだ健在だ。

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