【プロ野球】巨人快進撃のキーワードは「理想よりも現実」

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • photo by Nikkan sports

杉内がノーヒット・ノーランを達成した試合で、決勝ホームランを放った高橋由伸杉内がノーヒット・ノーランを達成した試合で、決勝ホームランを放った高橋由伸 交流戦前あたりからはじまったジャイアンツの快進撃は、依然として続いている。5月は16勝して負けたのはわずか4試合。交流戦に関しても、折り返しを過ぎた6月3日のバファローズ戦を終えて11勝3敗(6月4日現在)。セ・リーグの球団としてはじめての交流戦優勝に驀進している。貧打に苦しみ、2度の5連敗を喫するなど、9勝11敗と負け越していた4月がウソのような好調ぶりである。もちろんそれは数字にもはっきりと表れており、3、4月のチーム打率が.231だったのに対し、5月は.251と2分も上げた。投手陣も3、4月の2.19から5月は1.62とさらに安定感を増した。その理由はどこにあるのか。評論家の須藤豊氏に聞いてみた。

「ひと言でいうと、補強の効果ということ。特に杉内を獲得したのは大正解だったね。エースというのはただ勝つだけじゃなく、貯金を作るのも仕事。その点、杉内はもう6つの貯金を作っている。これは大きい」

 一方の打線も、一時の低迷を脱したように見える。原辰徳監督は4番にも送りバントを命じるなど、1点にこだわる野球をしてきたが、開幕当初はなかなか成果が上がらなかった。それがここに来てうまく機能しているのはどういうわけか。

「打線のキーになっているのは2番です。開幕直後はボウカーを2番に起用してした。メディアは攻撃型打線なんて言っていたけど、4番に送りバントをさせてまで1点を取りに行かなきゃならない貧打の中で、なぜ2番に攻撃型の選手を起用していたのか......。その後、寺内(崇幸)や藤村(大介)を起用するようになって、打線がつながり出した」

 須藤氏は、野球の質は変わってきたとはいえ、2番の役割は昔からほとんど変わっていないという。

「2番というのは打線の中で、唯一、バントさせても惜しくない選手を置くのが正しい。バントを失敗して、ああ、打たせておいたほうがよかったかなあと後悔するような選手を置いていてはうまく機能していかないんだ。寺内にしても、藤村にしても、打たせておけば一発があったかも、と後悔するような選手ではない。このタイプの選手で固定したのが全体のバランスをよくしているんです」

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