【プロ野球】栗山監督が行なった荒療治で斎藤佑樹は覚醒するか? (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 試合後の斎藤は、人を寄せつけないオーラを放っていた。調子を問われて一言だけ、言葉を発した。

「別に悪くなかったんで……」

 吉井コーチは交代のタイミングに納得していなかったのか、珍しく試合後、ぶっきらぼうにこう言った。

「調子は悪くなかったと思うし、初回のクソみたいなヒット(明らかにアウトのタイミングのファーストゴロが内野安打になった)でリズムを狂わされたね。(交代のタイミングは)知らん。監督が決めたんで、ワシは知らん。監督に聞いてくれ!」

 吉井の賛同も得ず、斎藤にまさかの思いを残した交代劇――果たして、このタイミングの意図はどこにあったのか。試合後、栗山監督はこんなふうに話していた。

「あれだけ打たれながらも点があまり入らないというのは佑樹らしさでもあるんだけど、今日に関しては球が全部真ん中に集まってくるし、全部タイミングも合ってしまう。バッターと全然ズレないから、ファールにできるところがファールにならない。斎藤ってピッチャーはバッターとのタイミングがズレるでしょ。それがズレないまま、タイミングが合ってしまう。だったらここは敢えていろんなことを感じてもらうためにも……やっぱりダメなときはダメだってハッキリ伝えないとね。本人も踏ん張りどころだと思うし、オレも含めて、ここをどうやって突破していくのか。こういうときは来ると思っていたし、ここを超えてくれる、こういうことを生かしてくれるピッチャーが斎藤佑樹だと思っているので、これからどう状態を上げていくか、一緒になって考えていきたいと思ってます」

 栗山監督が、斎藤に繰り出した次なるムチは、荒療治だった。誰よりも信頼し、高い評価を与え、大舞台を任せることで、斎藤に高いハードルを越えさせてきた栗山監督が、初めて斎藤からハードルを跳ぶ機会を奪った。

 指揮官が呼び起こそうとしているのは、内なる怒りによる覚醒か、はたまたマウンドへの渇望がもたらす底力か。
 次のマウンドは、6月6日の札幌ドーム。斎藤佑樹、24歳の誕生日である。

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