【プロ野球】楽天・釜田佳直、投手人生のきっかけは斎藤佑樹

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 最後に、田中と斎藤にまつわるエピソードをもうひとつ。夏の甲子園のあと、釜田は進学かプロ志望かで最後まで進路を決めかねていた。「僕らの世代ではナンバーワン」と認めていた日大三高の吉永健太朗が早々に進学の意志を表明したこともあり、「あの吉永でも進学するのなら……」と進学に傾いていた。しかし、大学で過ごす4年間と、プロで過ごす4年間のメリット、デメリットを考えたとき、頭に浮かんだのは中学1年の夏に見た、ふたりのその後だった。

「ちょうど決断に迷っていた時、田中投手と斎藤投手がプロの世界ではじめて投げ合ったんです。田中投手が勝ったんですけど、その試合から、ぼんやりながら答えが見えた気がして……。斎藤投手は今も変わらず好きですけど、その後の活躍やプロでの実績を見たら、田中投手に惹かれますね。1試合で18三振を取ったり……凄すぎます」

 これはプロ志望届けを出した直後に聞いた言葉だが、今やその田中と同じユニフォームを着てマウンドに立つ。初勝利の試合後、星野仙一監督は「(田中)将大みたいに成長してほしい」と期待を込めたあと、四球の走者を残しての降板に「7回までしっかり抑えないといけない」と注文も忘れなかった。これも課題を与える程に成長できる釜田の資質を見抜いてのことだろう。まだ半分以上も残るシーズンを終えた時、経験を力に変えられる男はどこまで大きくなっているのか。そして近い将来を思えば、憧れの田中のライバルになっているかも――そこまで想像させる何とも楽しみなルーキーの登場だ。

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